講義要旨
本研修では、荒川区立図書館ゆいの森あらかわの概要説明、施設見学、質疑応答を行った。
1.概要説明・DVD視聴
「にぎやかな図書館」というコンセプトのもと、交流施設として昨年の3月に誕生した施設である。中央図書館、吉村昭記念文学館、ゆいの森子どもひろばがひとつの施設に入っており、直営で常勤の職員20人(課長、係長含む)、非常勤の職員57人(司書37人、学芸員4人、保育士4人など)、合計77人がいるが、施設ごとに所管課が分かれているのではなく、すべて所属はゆいの森課である。1日2000人、土日は3000人ほど来館する。建物は下から上へ、中心から外側へ向かって静寂な空間となるよう設計されており、吹き抜けによって上下の空間に緩やかなつながりを持たせているとのことである。
2.施設見学
職員の方の案内により、2班に分かれて地下1階から5階とバックヤードを見学した。
地下1階は駐車場になっており、区内の図書館をまわる配送便もここで荷物の受け渡しを行っている。また、免震装置が見られるようになっている。喫煙所は地下1階のみで、路上喫煙防止のため、館内に設置した経緯がある。
1階のエントランスホールでは司書が月替わりで展示をしている。併設のカフェの入り口もここにあり、館内の本を持ち込んで中の返却棚で返すことができるようになっている。他にも絵本コーナーである「えほん館」、親子で遊べる「遊びラウンジ」や壁面に絵本が展示されたホール、託児室等があり、子どもから大人まで楽しめるスペースとなっている。また、特徴的なものとしては交流都市・幸せリーグコーナーがある。これはリーグ参加自治体からの寄贈資料のコーナーで、本だけでなく焼き物等の展示もされていた。
2階は話し声が聞こえる明るい雰囲気で、児童書コーナーやティーンズコーナーをはじめ学びラウンジやコミュニティブリッジというフリースペース等がある。軽食や会話もでき、ゲーム等で遊んでいる子どももいて、自由に使われている。また、学びラウンジでは、体験キットを借りて科学実験をすることができ、デジタル地球儀「触れる地球」では地球上の様々な事象を地球儀上に映して視覚的に学ぶことができる。
3階は一般書コーナーが中心となっており、貸出等のカウンターもここにある。特徴的なのは現代俳句センターで、俳句のまちとして重点的に資料を収集しているとのことである。
2階・3階の一角には吉村昭記念文学館があり、吉村氏の書斎が再現されている。
4階はビジネス支援コーナーや専門書コーナーがあり、ここより上の階は静かな印象である。レファレンスカウンターは土日の13時~16時半のみ職員が常駐する。また、予約制の研究室があり、1人4時間まで使用できる。個室ではないが机の幅が一般の学習室より広くなっている。
5階が学習室でもっとも静かなコーナーである。1人4時間までの利用で、一部の席は区民に限りインターネット予約ができる。その外には軽食のできるラウンジがあり、屋外のテラスでも食事や読書ができるよう開放されている。この階には乳幼児の避難場所という想定で防災設備が揃っている。
バックヤードは主に書庫の見学であったが、電動集密書架で、ジャンルごとに4つの書庫に分かれている。
3.質疑応答
携帯電話・ゲーム機の使用や食事等について、なるべく自由にしてほしいが注意書きなどをなるべく掲示しないという方針のもとでは、まだ利用者に戸惑いがみられるとのことである。また、ホールや会議室は一般には貸出さず、区役所の他の課にのみ貸出している。また、防犯カメラの設置表示があったが全部で50台ほど設置されており、顔や本は映らないようになっている。
感想
にぎやかな図書館、というコンセプトやその運営はやはり新しく、参加者からも「いきいきとした子ども達の姿をたくさん見かけた」「新しい形の複合施設を見学できてよかった」等という声が寄せられた。
館内での会話や飲食は需要はあるものの実現が難しい点のひとつであると思うが、うまく実現されていたように見えた。また、防犯カメラを設置しているところはあまり見かけないので驚いた。当初はそういった新しい図書館の姿に苦情もあったようだが、新しい形の複合施設として区民の方々に受け入れられているようで学ぶところも多かった。