講義要旨
○「展示 ~視覚で伝える本の魅力~」(岡崎 礼奈 氏)
東洋文庫には、東洋学研究のための専門図書館と研究機関としての2つの機能があるとのこと。利用者はほぼ専門の研究者だが、2011年にミュージアムを開館し、所蔵資料を紹介することで一般利用者の東洋学への関心を高めることに努めてい
る。
まず展示の支持具について、使用方法や作り方などの説明があった。古い資料だけではなく、新しい資料も支持具などを利用して展示するによって、利用者にその資料の重要性を知らせることができるとのこと。次に展示空間の演出ということで、のぞき込みケース内に布を引く、可動式パーテーションで区切る、展示資料の置く間隔の調整、照明の照度や当て方など、工夫次第で費用を抑えてできる演出についての紹介があった。また見せるという観点から「複製」の活用も効果があるとのこと。ただし著作権の関係から、一般の図書館では難しい面もあるとのことだった。資料と人をつなぐためには「解説」が有効であり、東洋文庫の解説パネルで実践している、本文は150字以内、キャッチコピーをつける、イラストの活用、フォント・形状など見やすさへの配慮など、利用者の視覚に訴える方法について説明があった。
展示については色々な方法があるが、「なぜそのテーマで展示するのか」という目的を明確にすることが大切で、大切だからこその難しさがあるとのことだった。
○展示実践「展示用品の紹介」(篠木 由喜 氏)
資料の種類別の展示方法について説明があった。まず本の展示について、表紙を見せるのか、寝かせて開くのか、立てて開くのか、を決めてそれに対応する支持具を選ぶ。支持具には特注品、既製品があるが、簡易なものは自分で製作もできるとのことで、クレードルの作成について実演があり、資料の測り方やクレードルの材質等の説明があった。次に巻物の展示について、巻物自体の取り扱い方や、補助具(ケサン・アクリルテープ・軸)について実演を交えて説明があった。最後に一枚もの(地図・写真など)の展示について、額に入れる際のマットの測り方、固定の仕方などの説明があった。額入れについては、複製を活用したり、普通の写真を入れたり、募集した読書感想文を飾ったりと色々な利用方法があるので、試してほしいとのことだった。
その後、ミュージアム内を見学し講義は終了した。
○感想等
内容が具体的で実践的だったので分かりやすく、参加者からも「展示する際の留意点について具体的で分かりやすかった」「展示用品について早速自作してみたい」との声が多く寄せられた。