会 場:島根県民会館 (島根県松江市)
テーマ:『子どもとともに読書のよろこびを分かち合おう』
研修内容:
<第1日目> 開会行事・基調講演①・事例報告3 件
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基調講演①:「よろこびを子どもと分かち合うために ~今、私たちができること~」
(ストーリーテラー・子どもと絵本ネットワークルピナス代表・松本なお子氏)
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(概要)松本氏は、静岡県浜松市で司書として勤務し、館長、子ども家庭部長として児童福祉業務にも携わり、幅広い経験をもつ。まず、子どもの読書の現状を伝え、私たちにできることは何か問いかけた。そのうえで、自身の経験を紹介しながら、優れた本の持つ力を強調なさった。さらに、図書館に来館しない(できない)子どもたちへのサービスを継続させるために、様々な機関が連携する組織作りの大切さを訴えた。
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事例報告1:光市立図書館の乳幼児サービスについて ~つながるサービスを目指して~
(光市立図書館司書)
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(概要)市の読書計画や運営方針、児童サービスの取組姿勢など基本事項の説明があった。ブックスタートやボランティアの継続のため、司書が丁寧にかかわる大切さや、今後の課題などが紹介された。また、産科医院と連携して出産前の夫婦に向けた絵本教室など、目新しい事業も知ることができた。児童サービスは、様々な人とつながることで、より充実することが伝わった。
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事例報告2:倉吉市立図書館のヤングアダルトサービスについて
(倉吉市立図書館館長・司書)
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(概要)コーナーの資料収集方針や選定基準をきちんと定めることで、バランスの取れた蔵書構成を維持している。市内にある2館それぞれで、サービスに特色を出すようにしている。小さい図書館では、司書と利用者の距離の近さを活かし、よい関係を築きやすい。大きい図書館では、ボランティアの中高生がいて、司書と協力して情報誌の編集発行を行い、交流の場にもなっている。今後は、学校との連携をより充実させ、イベントを実施したいと考えている。
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事例報告3:おはなしレストランライブラリー ~ひとりひとりに寄り添う図書館をめざして
(島根県立大学松江キャンパスおはなしレストランライブラリー司書)
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(概要)大学の敷地内にある図書館を市民に開放している。2人の司書で、利用者対応や授業支援、読み聞かせをする学生へのアドバイスを行っている。利用者の顔と名前、好みを覚えて、積極的に声かけをし、リピーターになってもらうことを意識している。おはなし会は、絵本だけでなく、わらべうたも行っていて、わらべうたのときの学生たちの声や表情の違いも感じている。
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<第2日目> 開会行事・基調講演②・全体会・研究討議
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基調講演②:「おはなしレストランへようこそ~地域と大学・学生を絵本でつなぐ~」
(島根県立大学人間文化学部長・教授・岩田英作氏)
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(概要)大学生が地域へ読み聞かせに出向くようになった経緯を紹介した。まずは、先生が近くの病院に出向いて説明し、理解を得ることから始めた。入院中の子どもも楽しんだが、学生にも大きな学びとなり、教科化に踏み切った。現在は、小学校と保育園に定期的に出向き、スーパーや老人ホームなどからも声がかかる。学生たちが、地域の人とかかわることで、コミュニケーションを学んでいる。また、「読みメン」(男性による読み聞かせ)を推奨する活動の事例も紹介。
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全体会・研究討論:「子どもとともに読書のよろこびを分かち合おう」
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(概要)岩田氏をコーディネーターとして、事例報告者から発表の補足があった。また、参加者から質問を受けた。ブックスタートの詳細、中高生のボランティアとの関係や情報誌編集方法、大学生の読み聞かせのアドバイスの仕方等。
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閉会行事
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研修成果:
すべての講演者と紹介された図書館が、児童サービスに対して熱意をもち、長期的な視点で取組をしていることがとても印象深かった。
幼い子どもにとって絵本やわらべうたの力は大きく、それを届ける身近な大人・親への働きかけ方を考えるきっかけとなった。今後は、図書館だけでなく、役所内の他部署や他施設と連携することにより、より多くの子どもたちにサービスすることが重要となる。そのためのネットワークづくりを、図書館員として考えていきたい。また、10代の子どもたちへのサービスは苦慮するところだが、中高生のボランティアとよい関係を築いている事例では、司書が親身になって中高生たちに対応していることがわかった。この場合も、今後は、学校と連携が重要で、図書館に来館するきっかけづくりを考える必要がある。
新しい取り組みや課題のあるサービスについて、いくつかの事例を聞くことができて有意義だった。また、「子どもとともに読書のよろこびを分かち合おう」という同じ思いを共有することができ、より広い視点で考えていこうと思いを新たにすることができた。