講義要旨
○施設案内(VTR視聴)
東京子ども図書館は、1950年代から60年代にかけて、東京都内ではじめられた土屋滋子さん、石井桃子さん、松岡享子さんが主催する家庭文庫が母体となって生まれた私立図書館。館の運営のほかに、児童サービスに関する講習会の開催や東日本大震災の復興支援として、陸前高田こども図書館への協力や被災地の小学校でのおはなし会など幅広い取組を行っている。
〇講義
東京子ども図書館で編集担当をしている講師から、具体例を交えながら書評の書き方について基本的な考え方が話された。
図書館員の書評は、一般的な書評とは違い、できるだけ本を客観的に、その全てが見えるように書く必要があり、偏見や思い込みを持たずに本に向き合う、子どもの気持ちになって思い切りその本を楽しむという取り組み姿勢が述べられた。
具体的な書き方として、ありきたりの表現を使わない、必要なら本から引用する、できるだけ具体的に書くなどの注意点のほか、かっこいいことを書こうとしすぎると言葉がすべる、売るための広告文と書評は違うのに広告文になってしまう、客観的に本を見る必要があるのに作家の視点になってしまうなどの陥りやすい失敗が紹介された。
最後に、よい文書を書くためにはよい文章を読むとよい、ということで、時には大人向けの古典を読むことを薦められた。また、書評は個人個人の身体から出た言葉であり、正解はないので、美しく書こうと身構えず、まずは書いてみることが大切だというアドバイスをいただいた。
〇施設見学
子ども向けの児童室、大人向けの資料室、おはなしのへやなどを見学した。児童室では、分類記号のみにこだわらず、地域別に歴史と地理は一緒にするなど、専門図書館ならではの配架の考え方を知ることができた。資料室には、児童文学の研究に有益な資料が多く、日本と世界の昔話に関する図書や海外の児童文学関係の賞の受賞作品(原書)なども豊富にそろっている。
〇感想等
講師の児童書や児童サービスへの豊富な知識と情熱が伝わってくる講義だった。参加者からは、「利用者のことを考えて書く大切さを改めて学びました。」「本にかかわる仕事をするにあたっての、自分自身の心がまえを改めて考える機会にもなりました。」などの感想が寄せられた。東京子ども図書館が、専門図書館として培ってきた考え方や技術は、館種は違ってもとても参考になると感じた。