令和5年度 専門図書館協議会全国研究集会大会に参加して
2024年1月8日 09時32分
事業年度 |
2023年度 |
参加研修名 |
令和5年度 全国公共図書館研究集会 <サービス/総合経営部門>(和歌山) |
研修期間 |
2023年11月9日(木曜)~10日(金曜) |
報告者所属 |
公共図書館 |
2023年度神奈川県図書館協会人材育成事業助成報告書 |
|
タイトル 氏名
研修名 期日 会場 テーマ等 概要
研修成果 |
「全国公共図書館研究集会に参加して」 松田 彰 (大和市立図書館、日本図書館協会認定司書第1196号) 令和5年度 全国公共図書館研究集会 <サービス/総合経営部門>(和歌山) 11月9日(木)~ 10日(金) ホテルアバローム紀の国、和歌山県立図書館 「図書館とSDGs―図書館ができる持続可能な取り組み―」 <第1日> 開会式・基調報告・事例発表 基調報告:「図書館はSDGsへの取り組みにどのような貢献ができるか」 講師 青柳英治 氏(明治大学文学部専任教授) (概要) SDGsについて、海外の事例、国内の事例、評価からみる図書館におけるSDGsへの貢献。 1.「SDGsと「知識創造型図書館」-大阪市立図書館の取り組み-」 発表者 上田優里 氏(大阪市立中央図書館 利用サービス担当係長) (概要) 大阪市および大阪市立図書館の紹介、各館の取り組み事例紹介。 2.「「真庭ライフスタイル」と図書館 -真庭市立図書館の取り組み-」 発表者 上杉朋子 氏(真庭市立中央図書館 参事) (概要) 真庭市の紹介、真庭市の事例紹介、市民との連携。 3.「絵本でSDGs 絵本で世界とつながろう~絵本を使ってできること~」 発表者 朝日仁美 氏(絵本でSDGs推進協会代表理事、絵本専門士、JPIC読書アドバイザー、糸魚川市学校司書) (概要) 推進協会の全国での事例紹介、SDGs関連の推薦絵本2冊読み聞かせ。 研究協議・情勢報告・閉会式 和歌山県立図書館見学会 (概要) 青柳先生による前日の基調及び事例報告のまとめ、先生から発表者3名への質問、参加者から募った質問への回答。 情勢報告 報告者 植松貞夫 氏(公益社団法人日本図書館協会理事長) (概要) 日本図書館協会の動向(財務状況、非正規職員の処遇改善、議員連盟対応ほか)、公共図書館・公立図書館・日本の図書館の状況、これからの図書館に求められる指向性。 和歌山県立図書館見学会 (概要) 蔵書点検期間中の県立図書館を職員の案内で、貴重な江戸時代の資料や徳川コレクションの音楽資料も収蔵する閉架書庫、南葵音楽文庫、開架、児童室、「がん」関係図書コーナーを見学した。 青柳先生の講演では、途上国を対象としたMDGsから対象を拡大したSDGsへの展開、各国の事例を水平展開するための理論的な解析など。実践にあたっての論点が整理された。 上田氏による、コロナ禍における取り組みも交えた大阪の事例報告は、一般的な市町村立図書館でも無理なく実行できそうなものが多かった。まずは日ごろ行っている企画を、17のゴールとの紐づけという観点で見直すことが肝心だと気づかされた。 真庭市の様々な取り組みは、前例主義や閉塞した環境からはでてこないであろう自由な発想によるものが多く、大いに刺激を受けた。移住者との連携、12月にちなんだ図書館にリボンをかけるといったアイディアと、それを声に出すことで協力者が得られたという流れは控えめな図書館員がいちばん学ぶべき姿勢だと感じた。 朝日氏は、糸魚川市の学校司書の仕事と並行して、絵本でSDGs推進の活動を行っているとのこと。新潟県外の図書館等にも足を運んでおり、神奈川にも来ていただけそうなので複数館で協力して招聘することも検討したい。内容も訪問先の要望に合わせた対応が可能で、講演や読み聞かせ、アニマシオンなども実施。 会場からは「図書館でSDGsに取り組む理由を市民にどう説明するか?」といった質問があり、スタート地点で悩む図書館と、人も予算もない中で実践を重ねる図書館とのギャップが強く印象に残った。 研究集会本編終了後は、和歌山県立図書館の見学会に参加した。蔵書点検期間中につき、市民がどのように県立図書館を利用しているのかの実態を目にすることができないのが残念だった。個性的な図書館が多い県内の図書館をどのようにまとめているのかも、また機会があれば伺ってみたい。 植松先生が示した最後のスライドは、今回の研究集会の発表内容に深く関連しているとともに、研究協議で透けて見えた変革への一歩が踏み出せないでいる図書館界への叱咤激励のようにも感じられた。
…………………………………………… ■これからの図書館に求められる指向性 1.多機能性 2.「場」としての図書館 3.地域との交流性と開放性 4.地域固有の文化・産業の重視 5.「役に立つ」図書館 6.利用者を啓発し、新しい価値観を提示する図書館 「存在感のある図書館」 「闘う図書館」 (植松先生配布資料 p.11) …………………………………………… 図書館員が「本や情報の提供が図書館の仕事」という固定観念に縛られている限り、予算的にも社会的な要請においても図書館の位置づけは現状維持すらかなわないであろう。勤務する図書館も開館から7年が経過し、新たな展開を模索しているところ。今回学んだことをこれからの運営にもしっかり反映させていきたい。 この度は貴重な機会を与えていただき、誠にありがとうございました。
会場後部に展示された青柳先生の著書と事例発表に関する本
和歌山県立図書館開架 木の文化資料コーナーと市民寄贈の家具
閉架書庫に収められた江戸時代からの貴重資料
徳川家のコレクションである南葵音楽文庫所蔵の音楽資料。 ベートーヴェン自筆楽譜も所蔵。
|