講義要旨
○一橋大学社会科学古典資料センターについて
1978年に設立。1850年以前に出版された西洋の古刊本を専門に収集している研究図書館であり、蔵書数は約80,000冊、職員数9名で運営されている。大正12年に購入したメンガー文庫をはじめとしたコレクションを所蔵しており、様々な資料保存に関連する事業を行っている。保存方針は「資料の歴史を尊重」「予防的な保存対策を重視」「利用を前提とした保存」「電子化、マイクロ化の推進」。
○保存対策について
保存修復工房は1995年に開設された社会科学古典資料センターの保存対策の拠点である。国立大学で唯一の西洋古典資料専門の工房であり、スタッフは製本家や保存修復家など4名。様々な保存対策が行われている。社会科学古典資料センターの書庫は光線対策、温湿 度管理、虫害対策、地震対策といった、保存対策がとられている。
〇西洋古典資料の保存に関する拠点およびネットワーク形成事業の紹介
社会科学古典資料センターが中核となって、全国の研究機関等が所蔵する西洋古典資料の保存状況の改善を目指す計画であり、保存状況調査、人材育成、地域講習会などを通じ、保存に関する各地の拠点と全国的ネットワークを構築する、2016年度から3カ年のプロジェクトである。
〇大学図書館における資料保存
日本の大学図書館員が資料保存のイニシアチブをとるケースは決して多くないが、「そこにある資料」の専門家は図書館だけなので、「自分たちをおいて他にはない」という認識をもち、主体的にイニシアチブをとることが必要ではないか。
「一橋大学社会科学古典資料センター」見学
2班に分かれて書庫と保存修復工房を見学。書庫は床井啓太郎氏に案内いただき、貴重な資料を実際に手に取って見ることができ、個々の資料にまつわるエピソードもご紹介いただいた。保存修復工房ではスタッフの方々の修理や保存箱作成などの実演や低温処置(虫害対策)のための冷凍庫などを見ることができた。
感想等
まず一橋大学のキャンパスや講義会場となった附属図書館の会議室を拝見し、歴史や伝統の重みをひしひしと感じました。今回は大学図書館以外の方の参加が多かったですが、テーマが貴重書の保存と活用ということもあり、館種に関係なく、興味深く講義を聴き、そして楽しく見学をしていただけたことが、アンケートの回答から伝わって来ました。