講演趣旨
2016(平成28)年4月「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(「障害者差別解消法」)が施行され、公共図書館においては合理的配慮の提供が義務化された。今まで公共図書館は、多様な背景をもつ地域住民を対象にサービスを提供し、その中で障害者への支援は「障害者サービス」という形で取り組まれてきた。しかしこれまでの枠組みでは、主に身体障害者を対象に議論がなされ、知的障害者についてはさらなる議論が求められるところである。
そこで本フォーラムでは、知的障害者を対象に、図書館サービスのニーズと提供する公共図書館側の支援体制の実態を知り、さらに実践を始めている公共図書館の取り組み事例を紹介して、的確な合理的配慮について考える機会とする。
基調講演
1 知的障害とは
知的障害にはどんな障害特性があるか、また個人差が大きく多様であることの説明。
2 知的障害者の図書館利用の実態とニ-ズ調査(2016年)
アンケ-ト調査結果より、どういった当事者の図書館ニ-ズがあるか、またJSPS科研費の研究協力館である公共図書館での取り組みを紹介。
3 ニ-ズに応じたわかりやすい図書や視聴覚資料
LLブックやマンガ、マルチメディアDAISYといった知的障害者にニ-ズのある資料の紹介。
4 LLブックとは
スウェ-デン語の「LättLäst」の略で「やさしく読める本」という意味。生活年齢に応じた内容がわかりやすく書かれている本、一般図書と同様のジャンルで、読み能力に応じた難易度のレベルをもつもの。
5 スウェ-デンの公共図書館における知的障害者への取り組みとLLブック最新情報
講師の方が見学をした図書館の取り組みについてを紹介。
事例紹介
文部科学省科学研究費助成事業「公共図書館における知的障害者のための合理的配慮のあり方に関する研究」研究委員会が主催し、奈良県の生駒市図書館と桜井市立図書館が共催で行った「知的障害の方のための読書支援サポート講座」を紹介。
知的障害のある方が読書を楽しみ、必要な情報を得ることができるように、知的障害についての理解を深め、わかりやすい資料の提供やサービスについて学ぶことを目的とし、2017年9月22日に生駒市図書会館(生駒市図書館)、9月29日と10月6日に桜井市立図書館で開催された講座。
感想
基調講演では、ニーズを知るためのアンケ-トや事例をもとに説明があったため、わかりやすく知的障害者の方に必要なことを知ることができた。また、アンケ-トの内容を知ることで、図書館サイドだけで考えるのではなく、障害者の方に意見を聞き、ニ-ズを知ることがサ-ビスの充実において必要だと実感することができた。
事例紹介では、知的障害の方のための読書支援サポート講座受講者から実習が大変好評だったことや申込が殺到したため、定員を当初より増やしたことなどを聞き、実習の大切さや障害者サ-ビスへの関心の高さを知ることができた。
障害者サービスの必要性は常々感じているため、講師の方々が仰っていた大切なのは各図書館でできることから始めるという考えをもとに、自館でのサービスの充実に努めていきたい。