令和4年度 第5回研修報告「おはなし会のてあそび・わらべうた」
2023年8月8日 10時37分
実施日 |
令和5年2月22日(木) 13時30分~16時30分 |
会 場 |
神奈川県立図書館 学び⇔交流エリア |
講 師 |
落合 美知子氏(「おはなしとおんがくのちいさいおうち」開設・主催) |
参加者 |
32 名 |
令和4年度神奈川県図書館協会第5回職員研修会
「おはなし会のてあそび・わらべうた」
1 日時 令和5年2月22日(木)13時30分〜16時30分
2 場所 神奈川県立図書館本館 まなび⇔交流エリア
3 講師 落合 美知子氏(「おはなしとおんがくのちいさいおうち」開設・主催)
4 参加人数 32名
5 研修会の内容
(1)最近のおはなし会の傾向について(参加館のアンケートより)
最近のおはなし会の傾向として、参加者がだんだん低年齢化してきているということが
あります。そうすると絵本のよみきかせだけでは間に合わず、わらべうたやてあそびをす
るにしてもレパートリーがあまりない、ということが悩みになります。いままでのおはな
し会は既に言葉を獲得している子どもに対して行っていたところがありますが、低年齢化
するにしたがって、従来のプログラム構成では難しくなってきます。
(2)落合先生とおはなし会について
落合先生が図書館に入ったきっかけは、1冊の本との出会いだったそうです。
『子どもの図書館』 石井桃子/著 岩波新書
本に対する絶対的な信頼を持って書かれており、これが20歳の誕生日に出版され、手
に取ったことから「これならできる」と思ったそうです。
転勤で日本のあちこちを動く中でおはなし会を行い、どうしたら子どもと本をつなげら
れるかということを考え、自分の家で文庫を開いたとのことでした。
※先生によるよみきかせ
『だくちる だくちる はじめてのうた』 V.ベレストフ/原案
阪田寛夫/文 長新太/絵 福音館書店
『でてこいでてこい』 はやしあきこ/作 福音館書店
『だくちるだくちる』はイグアノドンが初めて歌と命に出会った話であり、生の声で触
れ合う大切さや命の出会いが「うれしい」ということを伝えています。
子どもに絵本やおはなしを届けることは子どものことを知らないと難しく、よい本とは
どういうものかというのをおはなし会で実際に子どもと接しながら考えることになりま
す。図書館とは学びを助ける場所であり、子どもたちに本を読んでもらうためには絵本の
読み聞かせがその入口となります。このことを落合先生が実践されてきたお話が伺えまし
た。
(3)わらべうたについて
わらべうたはおはなし会ではつなぎの役割があったりしますが、それ以上の働きがあり
ます。
わらべうたは昔から伝承されてきたものであり、日本語そのものであるといいます。例
えば泣いている子どもでもわらべうたで歌うように話しかけると(こ〜んに〜ちは〜♪な
ど)、はっとして泣きやむことが多いとか。日本の音階でできているわらべうたはその言
葉のアクセントをそのまま歌うように言うだけで成り立つため、落合先生もおはなし会や
ブックスタートの際には歌うようにしているそうです。わらべうたは人とのコミュニケー
ションができるようになっており、体を使った遊びを入れることで感覚で体験することが
できるので、ひとつの歌でたくさんのことができます。
例えば『あんたがたどこさ』
子どものときボールをついて「さ」のところで脚の下をくぐらせる遊びをしましたが、乳
幼児(立ってだっこした状態)の場合は「さ」のところでちょっと体を沈ませるとか、シ
ンプルであるが故にいろいろな応用と工夫をすることができます。体を動かす場合、子ど
もが小さいほどリズムはゆっくりにすることが大事です。
コロナ禍でマスクをしているために口元が見えず、ここ数年子どもは言葉の獲得が遅く
なっているそうです。わらべうたは赤ちゃんの求めるもの(安心や愛情など)を伝えるこ
とができるため、保護者がまず楽しんで、そして子どもに触れながら歌うことが大事であ
るとのことでした。
(4)実践
講義の後半は床にシートを敷き、実際のおはなし会のように座って行いました。おはな
し会にはそれぞれの館で型があるかと思いますが、その型を続けることが大事です。おは
なし会の導入に歌うわらべうたがあれば、それを数か月続けることで(来る人が同じであ
ると想定して)「この歌がはじまりの歌」と意識してもらえます。ネタが多くなくても繰
り返し、そして工夫をすることで楽しくすることができます。
小物を使う場合はそれぞれに歌いながら渡し、また歌いながら回収をしたりします。布
を使う場合、参加者の年齢に合わせた大きさにすることも大事です(引っかかって転んだ
りしないように)。なかなか返してくれない場合も、歌いながら保護者が袋に入れる(返
す)ところを見せると、自分もやりたがることも。
図書館としては会場が危険でないことを確認した上で、子どもに「よく来てくれたね」
という気持ちを表現することが大事です。参加者の名前がわかるときはわらべうたの中に
それぞれの名前を組み込むことで、参加者ひとりひとりを大切にします。これらのことを
実際に体験することで、わらべうたと同じように感覚で理解することができました。
(5)感想
わらべうたはおはなし会のつなぎという役割だけでなく、子どもが言葉を覚えて成長す
る過程で、言葉に触れて、他人とコミュニケーションをとるという面において重要な役割
を果たすということが理解できました。家庭においてその時間があまり取れなくなってい
る現代において、図書館のおはなし会は来ればたくさんの言葉や歌に触れることができる
ため、子どもと本を結びつける最初の場として非常に意義のあるものであると感じまし
た。歌いながら、体を動かしながらの講習会であったため、参加者も皆さん楽しそうで、
3時間の講習会があっという間に感じました。