1.概要
図書館資料の補修に関し、参加者が所属する図書館(10館)の対応方針や、日頃の悩みについて、事前アンケートにお答えいただいた。当日は、回答を一覧にまとめた表をもとにオンライン上で情報交換を行った。
2.情報交換の要旨
〇状況別の対応
「水濡れ」、「書き込み・汚れ」、「ページ破れ」、「背の壊れ」、「臭いがついてしまった場合」について、各館の対応方法を共有した。その後、以下の内容について質問が寄せられ、実践している館から回答をいただいた。
「水濡れ」:冷凍庫とフリーザーパックを使用する方法
「書き込み・汚れ」:漂白剤の使い方
「ページ破れ」:カラーコピーを用いた補修
「背の壊れ」:「とじたくん」の使い方
「臭いがついてしまった場合」:消臭剤、イオン洗浄水、除菌機の使い方
〇資料別の対応
「無線綴じの資料」、「絵本」、「CD」、「旅行ガイド」等について、資料特有の悩みを共有した。解決策が見つからない事例もあったが、すぐ試すことのできる具体的な助言もなされた。
「無線綴じの資料」:のど割れの糊付け/穴をあけて糸綴じする方法
「絵本」:糸のゆるみの修理/折りが束ねられている絵本の糸綴じ
「CD」:研磨機の使用について
「旅行ガイド」:付箋を剥がした後のべたつきの対処法
〇除籍基準・保存期間について
「(補修をあきらめ)除籍する際の明確な基準を定めているか」という質問に対し、ウェブサイト上で基準を公開しているという館から回答いただいた。また、買い替えが困難である本や、市内で最後の1冊、郷土に関するものはできるかぎり補修し、保存しているとの情報が寄せられた。市内で1冊しかない本ということが分かるように、ラベルに貼っている自治体もあった。
〇補修の人員体制について
カウンターで簡易の補修をしているほか、人員が多い時間帯に手のかかる補修を行う館もあった。窓口委託事業者、修繕ボランティア、OGOBによるアルバイトが補修を行っている事例も紹介された。
〇参考にしている資料の紹介
『図書修理講座テキスト』(横浜市のウェブサイトで公開)
『防ぐ技術・治す技術』(日本図書館協会、2005年)
『やってみよう資料保存(JLA Booklet no.8)』(日本図書館協会、2021年)
〇その他
「補修になる前に予防ができないか」という質問に対し、壊れる前にブッカーで補修しているという事例が紹介された。また、「本への汚破損表示」についても質問があり、情報交換を行った。
3.感想
講師を立てずに情報交換を行う研修は、初めての試みであった。オンライン上では細かい工程を紹介しづらいなどの制約があったが、補修に関する様々な課題を共有し、他館の実践から学びあうことができた。
4.当日配布資料(会員限定)
当日配布された資料は、ログイン後、「グループスペース」→「会員のページ」→「キャビネット」→「R3年度」→「03 研修」→「第3回職員研修会配付資料」よりご覧になることができます。