1 講演内容
(1)レファレンスサービスの歴史
・日本の図書館業界ではあまりレファレンスサービスは根付いていない。レファレンスを訳す適当な日本語がない。
・まず優先すべきは貸出であり、それが十分になされた上でレファレンスが行われるべきであると言われていたが、どこまで行えば十分に行われたかが不明だったためにいつまでたってもレファレンスは後回しになってしまった。
・1950年代に日本図書館協会で参考事務規程(ルール)を作成。
・1961年にはアメリカの規程に倣って、日本でも参考事務規定が作られた。
・アメリカでは状況に応じて、新しい枠組みを次々に作っていくことで対応していった。
(代行からセルフへ)~2000年ごろから~
・このころからレファレンスを見直す動きが出始め、レファレンスブームが起こり、レファレンス協同データベースや大学図書館によってパスファインダーの作成が盛んに行われるようになった。
・インターネットを使って調べ物を行う人が増えていったが、その中で図書館はうまくその状況を捉えきれていなかった。
(2)レファレンスのコツ
①ツールを充実させることがレファレンスサービスの本態である
図書館業界の中では質問に対してどのように答えていけばいいのかという明確な回答がなされていなかった。調べ物のツールについては紹介されてきたが、その使い方についてはあまりかれてこなかった。
②些細なことでも知ると知らないとでは結果に大きく影響がある
ひらがなでも検索できるといっったことや、件名だけでの検索ではなく年代やその他の情報も加えて検索することで、自分で考えている以上の結果が得られることがある。
③コツを可視化するためには、書いてみることが大切
ベテランが新人に教えるためにスキルを言葉にして、ベテランと新人が一緒に対応する と、自然にスキルの継承ができる。また技法については、できるだけ特定的であるべき。特定的でないと、どれにでも当てはまってしまうため、教える際にはあまり役に立たない。
(3)汎用ツール
①レファレンスブック
レファレンスブックに関するツールについては、これまでリストアップされてきた。日本始まって以来の書誌情報が網羅されているものとして『日本書誌の書誌』が挙げられるが、厳選されたものとしては長澤雅男氏の『レファレンスブックス』がある。
②インターネット
インターネットに関しては、上手くリストアップされたものが少ないが、強いて言えば、「NDL人文リンク集」が一番使えるものではないか。NDL人文リンク集の良い点は、無料であること。また月1回検討会を行っているため不要なものは排除されている点、NDC順で書かれている点である。悪い点はリサーチナビとのすみわけがうまくできていない点である。
(4)事例紹介
① ファーストシューズの事例
・近年の習慣について調べる場合、雑誌等の検索が望ましいが、普通の雑誌記事索引で引いてみたり、ほかのデータベースも当たってみたが、全くヒットしない。
・となると、アヤシイ話題(定義が定まっていない)ではないか?と疑ってみる。
・結果的には、雑誌販売サイトの目次検索でヒットした。
②「書籍館」という言葉はいつ頃使われなくなったのか?
・言葉についての調べものは国語辞典でわかるが、いつ頃使われなくなったかについては、紙のレファレンスブックでは出てこない。
・「ざっさくプラス(データベース)」に言葉の流行り廃りがわかるおもしろい機能があり、トレンドも分かり、大いに活用できる。
※NDLデジタルコレクションが2022年にリニューアルされ、こうした調査にも活用できるようになった。
※NDL Ngram viewerも、出版年代ごとのキーワードの出現頻度を可視化するツールとして有効。
③ ゴールデンカムイで「不死身の杉元」のモデルになったのが舩坂弘。彼の興 した大盛堂書店の社史はないか。
・社史があればそれで回答できるが、無い場合、新聞から広告で記事を見つけ、回答する方法もある(データベースであればキーワード検索も可能)
・戦前のものを調べる場合、朝日、読売以外にも、官報が有効(戦前と戦後で官報の掲載内容が大きく異なる)
・ウィキペディアを当たるのもアリだが、本文の信用性は低いので、記事索引や参考文献等の情報を活用する。
2 感想
実際に国立国会図書館で勤務されていたということで、これまでの経験から実践に即した講義だったため、活用できるツールや効率よく回答にたどり着くためのノウハウなど、参考になる事例を多用してわかりやすく紹介いただき、参加者からも大変好評でした。
レファレンスはツールと経験が大事で、経験の浅い職員はベテランと組むことで、本やマニュアルからは学ぶことのできないコツを直接肌で学ぶことができるとの話から、育てることはもちろん、いろいろな角度から事例にあたることの重要性を再確認し、今後の業務に活かしていければと思いました。