1 概要
藤沢市にある湘南工科大学附属高等学校から副校長・図書館長の暮部優衣氏と司書教諭の齋藤之孝氏をお招きし、2023年6月に開館した新図書館「HABITAT(ハビタット)」について、講演をいただきました。
「HABITAT」は、従前の図書館とは異なるコンセプトに基づき、既存の概念にとらわれない新しい形式の学校図書館の複合施設として開館しました。講演では、開館に至るまでの経過や、開館後の取り組みについて、お話をしていただきました。
2 講演内容
(1) 準備から開館まで
今までの図書館の課題として、図書館の立地や建物の老朽化、図書館の利用ルールが厳格なことを原因として、利用が少ないことがあった。そこで、新しい図書館を建設するに当たっては、これらの課題を解決し、生徒や教職員にとって本当に意味のあるものをつくるため、生徒も加わったプロジェクトチームによるワークショップを幾度も開催し、新しい図書館のコンセプトの検討を行った。
(2) キャッチコピー・図書館名称について
「HABITAT」のキャッチコピーは「ちょっと寄り道ドキドキワクワク」。これは、「図書館に今まであまり来なかった人のために」、「ドキドキワクワク」には「知的好奇心」の意味が込められている。
新図書館の名称「HABITAT」は、日本語にすると“生息地”という意味で、図書館、教室、勉強の場、友人との交流の場という個別の役割を超えて、利用者一人ひとりにとって、心地よい空間となるよう願って命名した。
(3) 建物について
図書館とは呼ばずに、「HABITAT(ハビタット)」と呼んでいる。建物は3階建てで、階ごとに利用ルールが異なり、1階はおしゃべりOK・飲食不可、2階は両方とも可、3階はいずれも不可としている。開放的な造りが特徴的。
(4) HABITATの3つの柱
・自習
大学入試の過去問や参考書の貸出を行っており、朝7時~夜8時まで自習可能
・授業
館内に進学特化コースの教室を設置し、扉のない開放的な空間で授業を実施
・課外活動
部活動や生徒会活動で使用でき、「HABITAT」のイベント企画・運営も有志生徒による課外活動として行われており、新入生歓迎のイベントや季節ごとの飾り付けなどをしている。
(5) 開館後の取り組み
運営や設備に関して、「生徒ファースト」で工夫をしながら改善を図っている。例えば、授業と課外活動が共存できるルールづくり、定期テスト前の環境づくり、文化祭の会場としての使用、館内を活用した展示の実施、生徒向けのロッカー設置等。新しい図書館をより良くするため日々挑戦し、先生も生徒も試行錯誤しながら、新しい図書館を使っている。
3 感想
開館前の検討から現在の運営まで生徒が関わり、図書館の固定概念にとらわれず、生徒中心に新しい図書館をつくっていることが印象的でした。また実際に運営したうえで発生する課題や、その課題への対応方法について、当事者目線でのお話を聞かせていただき、新たな学びが多い講演でした。