1 概要
一般社団法人スローコミュニケーション副理事長 羽山 慎亮 氏を講師にお迎えし、事前に募集した事例を紹介しながら、図書館におけるわかりやすい情報の伝え方などを講演いただきました。
2 講演内容
(1)スローコミュニケーションの活動について
知的障害のある人などに情報をわかりやすく届けるための活動・支援などを行って いる。「わかりやすいニュース」は週一回更新し、ボランティアの方々や知的障害のある当事者の方々と一緒に作成している。
(2)知的障害と図書館
当然のことながら知的障害や発達障害の人たちも図書館を利用して良い。障害者ということで排除するような態度を取っていないか。図書館の人の対応と周りの利用者の理解があれば、知的発達障害のある人でも本を楽しみやすくなるし図書館の雰囲気も楽しくなるのではないか。
(3)障害者差別解消法
ア 合理的配慮
バリアを取り除くように個別に対応すること。合理的配慮はバリアフリーという意味合いで捉えられることもあるが、実際は個別対応なので、どんな対応が合理的配慮になるか場合によって異なる。合理的配慮や基礎的配慮を障害者のためにするイメージがあるが本質はそうではない。
イ 基礎的環境整備
様々な場面でのバリアフリー化の準備をすること。
(4)障害のある人にも配慮するということについての意識と観点
知的障害のある人は日常のコミュニケーションや文字の読み書きに困らない人もいる。知的障害に限らず外国の人も日本語が通じないと思ってコミュニケーション方法を判断してしまうということがあるかもしれない。まずは本人とどのようなコミュニケーションを取ればいいのかということを探っていくということが大切。
(5)わかりやすい本(LLブック)
LLはスウェーデン語で「読みやすい」という言葉からきている。スウェーデンでは多数の本が発行されている。マンガはわかりやすいイメージがあるかもしれないが、コマの配置が難しいのでLLマンガの制作も進められている。わかりやすい本は図書館に置いているかもしれないが、一般の本屋には置いていないので、知的障害者の人は自分の読みたい本を見つけるのが難しい。国立国会図書館が2017年に実施した「公共図書館における障害者サービスに関する調査研究」では、およそ3割の図書館にLLブックがあり、2010年に比べるとかなり増えている。一方LLブックがある図書館でも10冊以下で、LLブックの出版点数が少ないことも影響している。
(6)広報物をわかりやすくするポイント
①ことばを理解しやすくする。単語の長さ、表現の仕方、言葉自体を工夫する。
②フォント・レイアウトなどを工夫し、視覚的に見やすくする。
③情報の優先順位をつけ、情報を整理する。
ちらしや利用案内を作るというときに伝えたい情報が120%あった場合、そのままでは1%も伝わらず読もうと思ってもらえないかもしれない。情報の優先順位をつけるのが重要。伝わりやすいのは内容の難しさを減らすということではなく、難しい内容でもわかりやすく伝える。その上で理解の助けになる情報、背景になる知識を補足する。私たちが知っていて当たり前のことが相手にとって当たり前なのかを意識する。
3 所感
情報理解に難しさを抱える人たちに対応するための必要な考え方や視点を、具体的な事例を交えながら教えていただき、大変勉強になりました。図書館で障害のある方、外国の方等に対する良い対応はケースバイケースで、一様に解決できる配慮があるのではないこともわかりました。相手の立場に立って考えると全く違った答えが出るなど沢山の気付きがありました。日本語の文化の難しい言葉づかいを、わかりやすく情報提供するポイントが沢山詰まった研修でした。来館者が安心して利用できる環境づくりを目指して、今後の業務に役立ていきたいと思います。