1 講義要旨
(1) オープンサイエンスの背景と動向
・オープンサイエンス(以下OS)とはインターネット上で学術情報(論文・根拠データ等)に誰
もが無料で自由にアクセスできること。
・インターネットの普及により、論文・研究データ・ソースコードなどを誰もが自由にアクセスで
きる環境が整いつつある。「閉じた科学」から「開かれた科学」へ。
・学術雑誌の価格高騰問題など様々な要因からオープンアクセス(以下OA)運動が起こり、BO
AIによる宣言(2002年)以降、各国でOAに関する政策が進展。日本でも2025年度から公的資
金による研究成果について即時OAが義務化。
・日本の研究者によるOS実践状況は、論文OAは90%超まで普及、データ公開は約50%前後で停
滞(2024年にグラフスパイク。今後上昇していく兆し)、プレプリント利用は増加傾向だが分野差
が大きい。
(2) オープンサイエンスがもたらす効果
①研究の効率化
②研究コストの削減
③研究成果の長期保存
④研究不正の低減
⑤データサイエンスの進展
⑥異分野データの統合による新たな知見
⑦市民科学の推進と課題解決
⑧教育での活用
⑨イノベーションの創出
⑩地球規模の課題の迅速な解決
⑪根拠に基づく政策決定
研究者の立場においては、研究の効率化や不正の抑止、国際共同研究の促進などが期待され、
市民の立場からは、市民科学(Citizen Science)の発展、教育利用などが期
待される。
(3) オープンサイエンス時代の図書館に求められる役割
・大学・研究図書館
研究データ管理(RDM)、リポジトリ運営、OA推進の中心的役割。
・公共図書館
市民と学術情報をつなぐハブとしての役割が期待される。
パスファインダー、レファレンス、情報リテラシー教育などが重要。
「公共図書館では用語自体が浸透していない」という課題意識を持つことも重要。
2 質問
(1)学校での調べ学習における、図書館員の在り方について。
ある程度情報を探すことのできる生徒とそうでない生徒に対するアプローチは違う。情報リテラ
シーを伝えることが大事。
(2)レファレンス等で信頼性の高い情報を提供するために、論文の良し悪しをはかるには、何を参照
すべきか。
各論文やデータの信頼性をはかるのは研究者でも難しいことである。簡易的には被引用数やイン
パクトファクターを確認することが挙げられるが、完璧ではない。
(3)オープンサイエンスに対する抵抗感はまだあるか。コスト負担への考え。
抵抗感はまだ残っている。世代間ギャップがあり、若手にとってハードルの高いものになってい
る。理由としては公開にコストがかかるためである。プレプリントの場合はコストが抑えられる
が、評価につながらない現状もある。オープンサイエンスはいまだ過渡期である。
3 感想
公共図書館ではオープンサイエンスという言葉すら浸透していない現状を身をもって感じている。ただ、講演会で示された、Wikipediaの学術引用や市民科学プロジェクトの例を見ると、市民はすでに学術情報に触れ始めていると知ることができた。公共図書館がそこに橋を架ける余地は大きい。
講演の中で図書館員は“長期保存”のプロフェッショナルであることが示されている。改めて研究論文やデータの管理と図書館の親和性を認識した。
オープンサイエンスについてはまだまだ世界的にも過渡期であり、問題の解決には時間を要する。しかし、図書館・図書館員が社会の知識基盤としてどう成長していけるのかを考える講演となった。