午後8時30分まで開館しています -調査研究型図書館の夜間開館-
2012年3月14日 13時14分 [管理者]横浜市中央図書館調査資料課調査係 黒岩 道子 横浜市中央図書館では,平成12年4月から午後8時30分まで開館時間を延長しました。それまでは,地域館と同様に平日は午後7時までの開館でしたが,特に勤め帰りに図書館を利用したいという要望が強く,開館時間を延長しました。
午後5時30分頃から6時過ぎくらいまでは,利用者の入れ替わりの時間のようで,昼間時の利用者がそろそろ帰りはじめ,勤め帰りと見受けられる利用者の来館が始まる時間帯です。6時を過ぎると,明らかに目的を持って来館する利用者が目に留まるようになります。横浜市中央図書館の3~5階は調査研究型図書館として資料収集をし,情報機器の整備をしていますので,昼間時にも特定の情報を求めて来館される方が多いのですが,夜間の来館者は昼間時より「せっぱ詰まった」雰囲気があります。「明日の会議に使うのだが,この製品が発表されたときの新聞記事を見たい」 とか「〇〇に関する判例を見たい」など「どうしても今日中にこれを調べたい(から中央図書館まで来た)」という方が多く来館されます。
平成12年4月から13年3月までの中央図書館の入館者数は午前9時30分から午後5時までが1,185,796人(全体の89.8%),午後5時から8時30分までが134,773人(全体の10.2%)ですが,調査係が受け付けた「レファレンス受付件数」は,午前9時30分から午後5時までが35,976件(全体の82.6%),午後5時から8時30分までが7,579件(全体の17.4%)となっています。入館者数と「レファレンス受付件数」の昼間時・夜間時の比率を比較すると,夜間時はレファレンスを受け付ける密度が昼間時より高く,夜間開館時にもただ図書館が開いていればいいというのではなく,利用者は図書館に対して「情報提供」を求めているということがわかります。
横浜市中央図書館では,地域館では収集が難しい専門書や調査研究用資料として辞書・事典類,各種調査報告書・統計書・企業情報などを収集していますし,横浜市図書館(中央図書館の前身)当時から蓄積された横浜関係資料,新聞・雑誌のバックナンバー,地図など他ではなかなか見ることのできないコレクションを所蔵しています。また,マイクロ・フィルム,CD-ROM資料の提供もしています。そのために,利用者の期待も大きく「中央図書館に来れば何とかなる」と遠方から足を運ぶ方も多いので,その期待を裏切らないために,司書も昼間時とは違う緊張感があります。
というのは,夜間開館時は司書にとっては求められた情報を提供する環境としては,非常に厳しい時間帯であるからです。自館の資料で回答ができない場合,昼間時であれば他の情報提供機関を紹介するなどの手段がありますが,午後7時ともなれば,他の図書館・類縁機関は閉館し,有力な情報源である役所関係も電話が通じなくなります。他のバックアップを頼むことなく,まったくの孤立無援で次々に来る問い合わせに答えなくてはなりません。自館の資料以外で頼りになるのはインターネット情報くらいでしょうか。それもインターネットが使いこなせることが前提ですが。 図書館が提供した情報に満足であれば利用者は「開いてて良かった」となりますが,満足のいく回答が出せなかった場合は「こんな時間に,こんなところまで来たのに・・・」とその落胆ぶりは昼間時以上です。夜間開館時の情報提供業務は,昼間時以上の資料への知識,情報源への知識が司書に求められるのではないでしょうか。
夜間開館が始まる前は「自習している人が閉館までいるだけで,利用はさほどではないだろう」という声がありました。確かに昨年4月ごろは7時をすぎると,館内が閑散としてという日もあったのですが,今では夜間開館が定着し,夜間来館者が増えました。スーツにネクタイ着用という「サラリーマン風」の利用者の姿が昼間時にも多いのは中央図書館の特徴でしょうが,夜間は利用者の6割くらいが勤め帰りの方,2割が学校の授業が終わってから来館した学生のようです。以前は7時の閉館前に駆け込んできて,大慌てで書架の間を走っていた方々にも,ゆったりと本を見ていただけるようになりました。
働く人をとりまくさまざまな環境が大きく変わろうとしている現在,夜間に図書館を利用したいという要望が増大していくことは間違いないでしょう。横浜市中央図書館の場合は調査研究型として特化された図書館としての集客力があり,また立地条件として交通の便が良いなど夜間開館が成功する条件が整っていました。しかし,夜間利用者の定着は「勤め帰りに利用したい」という要望に的確に対応した成果ではないでしょうか。