1. 概要
第6・7回職員研修会は、相模女子大学で行われた。第6回は相模女子大学附属図書館の見学、第7回は相模女子大学の司書過程と地域連携についての講義として、同時開催の形式となった。
2. 第6回『相模女子大学附属図書館見学』
現在の建物は26年前(1992年)に開館したという相模女子大学附属図書館。蔵書は約40万冊、閲覧席も約500席を備えているとのこと。
まずは1階入口の展示スペースで学生に向けて本を手に取ってもらうための様々な取り組みの紹介があった。就活生向けの企業情報調査の展示のように時期に合わせたものから、一年生が本に触れる機会を増やすために軽めの小説を展示しているコーナーや、一度も貸出されていない資料をポップに紹介する「CAFE貸出ゼロ」など、ただ並べるのではなく学生が手に取りやすい工夫がされている。
また、1階2階共に、学習スペースを多く設けているようで、個室の読書室やグループ学習室の他、寛ぎながら読書ができる和室や、飲食可能で自動販売機も設置されている「ライブラリー・カフェ」など、学生にとって居心地の良い環境作りを工夫していることが紹介された。
階段で2階に上がった展示コーナーでは、教員の研究成果の展示や、学生がゼミで作成した英文のオリジナル絵本の展示も行われており、授業用参考文献コーナーや資格・検定学習室などと共に、大学図書館ならではの授業連携の取り組みも行われている。この他、DVDを閲覧できる視聴室なども見学したが、館内のどの設備も学生の利用する姿が見られた。
3. 第7回『司書課程・図書館・地域社会との連携について』
講師の宮原志津子氏は、三鷹市で7年ほど司書職員をしていた経験を持つ他、JICA青年海外協力隊でベトナムへ司書として派遣された経験や、国際交流基金マニラ日本文化センター図書館の立ち上げにも携わった経験を持つ。
始めに、相模女子大学の司書過程について説明があった。教育の質の担保の観点から、2年次修了時に成績要件等の確認を行うようしたことで、受講者自体は減少した一方、受講者の質が高くなったとのこと。また、研究者ではなく、図書館の現場で働く職員を育成するという考え方でカリキュラムを組んでいるそうで、特に今回の発表内容では実践的な授業が行われている様子が伺えた。図書館業界への就職については情報も限られてしまうため、就職支援講座も行っているとのこと。
特色として、図書館実習を必修としていることが挙げられた。神奈川県内では相模女子大のみで、全国でも10校程しかないようである。この図書館実習を含め、実践的な司書育成の一環として、今回のテーマである地域連携の取り組みが行われている。
例えば交流型の地域連携として、相模女子大学の「Kids'サマースクール」という催しの中で開催される夏のおはなし会。ちょうど図書館実習の直前に行われるため、その予行演習としての位置づけもされている。この他、相模大野図書館との協働でYAコーナーの活性化、ティーンズ☆フェスのPRを行ったり、図書館と市民をつなぐ会との協働でポスター作成やイベントの開催も行ったりしているそうだ。
地域連携の取り組み自体、試行錯誤の部分もある。しかし、学生にとって図書館の現状についてより深く学べること、図書館にとっては学生の視点を取り入れられること、大学にとっては地域との接点を生むこと、地域住民にとっては生の声を伝えられることなどメリットも多い。5年ほど行う中で感じた連携の秘訣としては、関係各所の理解と協力、関係各所との報連相、時間人員の確保、学生の達成感などがあるということだった。
4. 感想
利用を増やすための環境作り、図書館と地域の係わり方等、参考にしたい内容が多かった。大学図書館に限らず公共図書館等でも、各館の現状や課題に合わせて工夫していくことが必要だと感じる。AIの台頭で司書の専門性が疑問視される中、地域連携の重要性が高くなっていくと予想される。各館、各図書館員が問題意識を持って取り組んでいく必要があるのではないか。