講義要旨
国立映画アーカイブは、昭和27年に国立近代美術館の映画部門として開設され、昭和45年、美術館の竹橋への移転に伴い、東京国立近代美術館フィルムセンターとして独立開館。その後、平成30年に独立行政法人国立美術館の「国立映画アーカイブ」として設立されました。現在ある地上7階地下3階の建物は、平成7年にリニューアルしたものとなっています。
ここでは日本映画、外国映画にこだわらず、残存されているフィルムを収集し、特に芸術的・歴史的・資料的な価値の高い映画フィルムについては、復元作業も行っています。所蔵フィルムは約8万本あり、そのほとんどが、相模原市にある分館の、完全設備の保管庫に保存されていて、必要に応じて京橋まで輸送して上映などに利用されています。
またフィルムだけでなく、デジタル作品を含む、映画関係の資料の収集も行なわれており、4万6千冊以上の映画関係図書をはじめ、貴重なポスターやシナリオ、スチル写真なども整理・保存されています。これらのフィルムは、保存されるだけではなく上映も行っており、監督・俳優・製作国・ジャンル・時代など、テーマに合わせて安価な料金で映画を観ることができて、一般の方にも楽しめるようになっています。
上映に使用されている「長瀬記念ホールOZU」は、階段状で310席あり、サイズに合わせてスクリーンの大きさを変えることができます。映写室というと普通は狭い部屋をイメージしますが、ここの映写室はかなり広い空間があり、これから上映する作品のケースがたくさん積まれていました。映写機材には35ミリと70ミリ兼用の映写機と、16ミリ用の映写機が設置されていて、それぞれ上映する映画に合わせて、映写スピードを調整できる装置がついています。
4階の図書室には、映画に関する2万4千冊の和書や洋書を閲覧することができ、書庫には、国内外の映画雑誌やシナリオの決定稿などが保存されています。映画プログラムの収集も始まっているそうです。
今回は工事のため見学できませんでしたが、地下3階には、相模原の保存庫から運ばれてきたフィルムの一時保管場所となっており、相模原同様、温度5℃、湿度40%の環境に保たれています。保管用ロッカーも、独自のものを使用して、フィルムの酸化や劣化を防ぐように工夫されているとのことです。
最後に7階にある展示室を見学させてもらいました。ここにはリュミエール映写機で撮影された日本最古の映像に始まり、日本映画の歴史を紐解くさまざまな資料がスチル写真や機材や映像とともに展示されています。企画展では今回「生誕100年映画美術監督木村威夫」展が開催されていました。
感想等
日本唯一の国立映画機関であり、映画の保存・研究・公開を通して映画文化の振興をはかる拠点として、国立映画アーカイブの文化的・歴史的な重要な役割を、今回の視察で学ぶことができました。 特に7階の展示室は、個人でも見学できて、見どころもたくさんあっておすすめです。ぜひ立ち寄ってみてください。