令和5年度 第4回研修報告「子どもの本の紹介文の書き方」
2024年4月18日 10時01分
実施日 |
令和5年11月21日(火) 13時30分~16時30分 |
会 場 |
神奈川県立図書館 学び⇔交流エリア |
講 師 |
川上博幸氏(元大阪府枚方市立図書館長) |
参加者 |
27名 |
令和5年度神奈川県図書館協会第4回職員研修会 「子どもの本の紹介文の書き方」
1 日時 令和5年11月21日(火)13時30分〜16時30分
2 場所 神奈川県立図書館本館 まなび⇔交流エリア
3 講師 川上博幸氏(元大阪府枚方市立図書館長、)
4 参加人数 27名
5 研修会の内容
(1) はじめに
今のZ世代と言われる若者の6割が月に本を1冊も読んでいないと調査結果から、ますます、図書館が廃れていくことが予想されるため、子どもへの読書推進が求められている。また、子どもには学習する権利、知る権利、本を読む権利も保証されており、紹介を受ける権利もある。
(2) 図書館
最近では、図書館の機能の理解が進んできたが、図書館の活動を知ってもらうには、図書館からの発信が重要であり、そのことにより地域社会に存在感を認められる。
ランガナタン図書館五原則を理解し、図書館員としてそれを意識する。
また、図書館として、子どもに読む喜びを与える方法として、子どもと本をつなぐ役割があるが、それには複数の手段があり、紹介文・ブックガイド・ブックトーク・リスト・展示等、各独自の技術があり磨いていく必要がある。
(3) 子どもの本の紹介/ブックガイド
紹介文・ブックガイドとは、書物(本)の紹介であり、手短に知識、情報を提供して読書を促す働きをする。関連用語には、梗概、解題、注解、批評、書評があり、昔は、各書物(本)について解題を作りそれを元に選書を行っていたが、今は減ってきてしまった。
本の紹介・ブックガイドとは、本と読者を繋げる役割がある。しかし、子どもの場合は、状況が少し違う。子ども紹介文を見て欲しがるのではなく、親、祖父母などが子どもに買い与えているため、紹介文を見る人(大人)も対象に考えることが必要である。
(4) 紹介文・ブックガイドを書くにあたって
・心がまえ
紹介文・ブックガイドを書く心がまえとして、実際にその本見たことが無い子や人に向けてイメージが湧くように書く必要がある。また、あらすじを全部紹介して読者の“読む楽しみ”を奪うことや、私見による裏読み等を紹介文に書くことは、読み手の理解を誘導してしまうので、好ましくない。
題名から内容が推測しづらいものは、少し踏み込んで題名についても触れて紹介するとわかりやすい。
(5) 紹介文(ブックガイド)の実際
・内容の把握
図書の種類、区分によって内容の把握の仕方が違い、文学は、主題として取り上げやすいが内容把握が難しく、科学誌等は、一定の予備知識が必要である。
著者の想定読者を意識して紹介文を書くことを心掛ける。
・本と筆記用具を手にして
紹介文を書くにあたっては、第一印象を大事し、まず口に出してみる。それを言葉にして文章にしていく。また、どんな本か見たことがない人にもわかるように書くことを意識する。
・実際に書く・執筆
文章は手短に、素直な表現で書き修飾句が長くならないよう気を付ける。また、間違いなく伝えるという気持ちで書く。
紹介に使う要素や項目は多めに用意しメモに書き、メモの中から書く項目を選択し、口に出しながら順序を練るようにする。限定された字数では、まず、書きたいことを書ききってからそれを削除していく。
子どもは主題(テーマ)や意義、題材に興味を持つのではない。
・記述面
“です”、“ます”、“である”調を統一し、当用漢字の範囲内で、常用漢字を使う。難読漢字を使う場合には直後にヨミを括弧書きする。また、本の帯やカバーの袖、あとがきに寄りかからず、必ず読んでから書く。
・書いた後で
書いたら一旦、時間を置いて再考、推敲し、再読、熟読、再吟味の手間を厭わない。
-休憩- 一旦休憩を取り、前半について質疑応答を行った。
質問-現在、小学校1・2年生向けの紹介文作成を考えているが、紹介文の長さ (文字数)は、どの程度が適当か教えて欲しい。
回答-最低でも100字以上必要だが100字では、キャッチコピーか新聞広告くら いの文字数となるので、150字以上が良いと思う。また、書く場合は200字で書いて150字に削ると良いと思う。
(6) 事前課題の講評
事前課題として下記の本から1冊を選び200字から250字程度の紹介文の提出をお願いしており、提出をうけた課題について講師より提出分を講評いただくとともに、150字、200字、300字の場合、自分ならこう書くという参考例をご教授いただいた。
・『絵本で旅する国境』 クドル/文、ヘラン/絵、なかやまよしゆき/訳
文研出版 ISBN:978-4-580-88734-3
・『エイドリアンはぜったいウソをついている』 マーシー・キャンベル/文、コリーナ・ルーケン/絵、服部雄一郎/訳、 岩波書店 ISBN:978-4-00-112696-9
・『トムと3時の小人』 たかどのほうこ/作、平澤朋子/絵、 ポプラ社
ISBN:978-4-591-17032-8
(7) 感想
「子どもの本の紹介文の書き方」ということで、日頃から行っている新刊図書の案内や各種リストに掲載する図書の紹介文の作成に、大変、参考となる研修で、申し込み時点から研修会の参加希望が多かった。また、当日、参加された皆さんも、自分の作成した図書の案内や紹介文の書き方が正しかったのか、何か不足があったのではないかなど、興味深く聞き入っており、ケーススタディを踏まえた講義や参加者が事前課題として作成した紹介文を講評いただくなど、休憩を挟んだ3時間の講演会があっという間に終わってしまい、県内で働く図書館員の資質向上に資する有意義な研修となった。