講義要旨
現在の図書館は、出版された資料を収集するだけでなく、様々な資料を収集することが求められている。資料の提供においても閲覧・複写・貸出だけではなく、デジタルアーカイブといった新しい提供方法も求められている。しかし、新しい方法で提供するためには、その方法に法的な問題がないか等を検討する必要がある。本研修では、図書館業務とかかわりの深い著作権法や変容している図書館業務にかかわる法律について、正しく理解することを目的に行った。
研修はパワーポイントの資料をもとに講義形式で行われた。講義後に休憩をはさみ、質問のある研修者から質問を集め、講師の方から解説をしていただいた。
講義では、まず「著作権は何を禁止するか」という内容で、複製権、上演権・演奏権、上映権、公衆送信権、展示権といった、図書館業務と密接にかかわる内容について、一般的な解釈や事例、図書館員から多く質問のでる内容について説明があった。特にかかわりの深い、図書館での複写サ-ビスや映画の上映会については、より詳しい実例をもとに説明があり、受講者側もより熱心に聴講していた。
続いて、著作権の保護期間や肖像の利用など、ポピュラ-な事例をもとにした説明だった。肖像権については、実際の画像をもとに肖像権に抵触するおそれがあるのか、画像の情報・その利用目的などを具体的に検証していった。
終わりに国立国会図書館でのア-カイブへの取り組み、各図書館での取り扱いなどの説明を受けた。パソコンやインタ-ネットなどの普及といった時代性による変遷がよく分かる内容だった。
質疑応答では、数多くの質問が集まったが、いずれも図書館員ならば興味関心のある実務に即した質問内容で、講師も予定時刻を超えながらも丁寧に解説をしてくださった。
感想
講師の説明が具体的で分かりやすく、図書館員の実務に即した内容だったため、非常に理解しやすく、全体をとおして興味を引く内容だった。
複写サ-ビスについては、各図書館で対応に頭を悩ませている部分のため、細かい説明を受け、改めてどこまで図書館側がチェックを行うかの難しさを感じた。他にも譲渡・貸与の申し出のための複製・公衆送信可能という説明に、書籍の書影の取り扱いについて、今まで知らずに出版社に個々に問い合わせをしていたという感想が多かった。
時代の変容によっても影響を受けるということや法の解釈の難しさ、その中での図書館の在り方の検討が常に必要になることを痛感する研修だったが、難しい内容だからこそ、著作権については、情報収集や研修会への参加などにより、図書館員が正しく共通の理解をしていく必要があると思った。