○研修会概要
2部構成とし、1部は明治学院大学横浜図書館学生サポーターの事例発表、2部は中岡祐介氏の講演「本をつくる 本を届ける 独立系出版社と本屋のはなし」が行われた。
第1部
事例発表:明治学院大学横浜図書館学生サポーター
1 概要
明治学院大学横浜図書館の学生サポーターが事例発表を行った。学生サポーターは「学生と図書館をつなぐ存在」として、読書推進や利用支援の取組を日々展開しており、本フォーラムではその具体的な活動と工夫が紹介された。
2 発表内容
学生サポーターは現在17名で構成され、図書館内の学生ヘルプデスクにおいて利用案内等を行うほか、企画展示の立案・作成など利用促進に関わる活動を行っている。図書館内には学生サポーター専用の展示架が設けられており、学生の興味・関心を意識したテーマ設定や装飾を実施している。
2025年春学期には「企画展示~竹取からはじまる物語」と題し、古典文学から現代のベストセラーまで日本文学を紹介した。紙による竹の装飾を制作するなど、視覚的に関心を引く展示の工夫がされていた。
また、「図書館自販機(HOT:温泉・恋愛、COOL:ホラー・ミステリー)」や「“変な授業”はじめました」など、学生の発想を生かした企画展示を実施しているほか、雑誌総選挙や保存期間終了雑誌の無料配布など、来館のきっかけづくりとなる取組も行われている。
このほか、ホワイトボードやミニ黒板を活用したミニ展示として、犬・猫に関する本を紹介する「わんにゃん図書館バトル」を実施し、犬派・猫派のどちらかにシールを貼ってもらう参加型アンケートを取り入れている。簡単に参加できる仕組みを設けることで、展示への関心を高める工夫がされていた。
さらに、新入生向けの取組として図書館ツアーやスタンプラリーを実施し、図書館の使い方や設備の利用方法を案内しているほか、通常のヘルプデスクに加えて入口付近に出張ヘルプデスクを設置するなど、図書館に不慣れな利用者への支援を行っている。
3 感想
学生サポーターが主体となり、学生の視点を生かした展示や参加型企画を実施している点が印象に残りました。特に、シール投票のように気軽に参加できる仕掛けを取り入れることで図書館への関心を高めている点は、よく工夫されていると感じました。
公共図書館においても、中高生を含めた若年層の利用促進に向け、利用者の視点を取り入れた展示や参加型企画を工夫していくことも重要であると感じました。
第2部
「本をつくる 本を届ける 独立系出版社と本屋のはなし」
講師 中岡祐介氏(株式会社三輪舎 本屋・生活綴方)
1 概要
今、小規模で個性的な独立系書店や出版社が注目を集めている。横浜の妙蓮寺で出版を手掛けながら本屋を運営する中岡祐介さんに、本をつくる本屋や出版の仕事について、たくさんの写真を示しながらお話しいただいた。
2 講演内容
(1) 自己紹介と略歴
大学の映画研究会を経て、2006年にCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)入社、TSUTAYA TOKYO ROPPONGI (現・六本木蔦屋書店)書籍売場アートブックを担当
2014年に出版社・三輪舎を開業
2019年より横浜・妙蓮寺の街の書店・石堂書店の経営に参画
2020年2月、本屋・生活綴方を開業
2020年11月、本をつくる本屋として、小規模出版レーベル「生活綴方出版部」を開始
2023年春、ブックマーケット「本は港」プロデュース
(2) 出版社(三輪舎)をなぜつくったのか
県立図書館職員の辻さん(司会)と一緒にTSUTAYA TOKYO ROPPONGIで働いていた。いつか本屋を始めたいと思っていた。ミシマ社、ナナロク社等、独立系出版社(取次からの配本がなく、発行者が編集を手掛けている)の良さを感じていた。
(3) 出版社(三輪舎)のしごと
出版の仕事は、著者、校正者、装丁家、印刷所、製本所のみなさんとともに行なうもので、出版者(≒発行者、編集者)は出版したい本を読者に読まれるように、「くふう」を考える仕事である。だから、出版は一人でもできる。
(4) なぜ出版社が本屋をやることになったのか
石堂書店に多額の借金があることから始まったクラウドファンディング「まちの本屋リノベーションプロジェクト」のコアメンバーになったことから。
(5) 「本屋・生活綴方」はどのような場所なのか
「まちの本屋」石堂書店と対になる「独立書店」=ハイブリッド式で、居場所・コミュニティではなく、表現をもちよる場所としている。
店番は必ず、表現をなりわいにしなければならず、リソグラフや裁断機、丁合機もある。
(6) どのように本(本のつくり手)が生まれるのか
本屋・生活綴方では、フリーペーパーから小説まで手掛けている。自分で本をつくる本屋はあまりない。横浜創英中高でのワークショップや八戸ブックフェス、港北小での本づくりなど、催しを行った。
(7) 本をつくる本屋
「本をつくる場所をつくる」のだと思っている。特別な人だけが本をつくれるわけではなく、いろいろな場所でいろいろな人が本をつくることができる。
3 感想
中岡さんは、人間としての魅力にあふれていました。中岡さんの周りに地域の方たちが集まり、皆で本をつくり、本屋をつくっていく様子がとても楽しそうで、話を聞くだけではなく、その場に参画したらもっと楽しいのだろうと思いました。
今、図書館も地域の方々と積極的に関わり、人と人とが交流する場としての役割を求められています。中岡さんの言葉には、これからの図書館が目指す道へのヒントがたくさんありました。