協会報(~239号)

横浜市立大学学術情報センター本館の市民開放について

2012年3月15日 13時46分 [管理者]
●横浜市立大学学術情報センター本館の市民開放について


 横浜市立大学学術情報センターは、学内の学生や教職員向けのサービスに加えて、かねてより市民の方にも閲覧・複写サービスを行なってまいりました。平成13年9月からは「市民向けオープンガイダンス」、平成14年9月からは横浜市内の大学で初の「市民利用制度」を開始しました。これは、本学の学術資料を市民向けに貸出すものです。更に、平成15年9月28日からは市民の「日曜日利用」も開始いたしております。これら市民向けサービスにつきましてお話させていただきたいと思います。


1 市民向けオープンガイダンス
 市民向けのオープンガイダンスは、そもそもは当センター司書が行なっている講義(情報探索論)や、学内の学生向けに行なっている情報探索のためのガイダンス等で培ったノウハウを活かして、市民向けに理解しやすいように構成し、提供するものです。その内容は、「学術情報の概要(情報探索概論)」、「(大学)図書館の活用法」、「データベースの概要」、「インターネット(WWW)を利用した情報探索」を中心に組み立てられています。平成13年9月27日から開始し、現在は毎月第2木曜日の午後に開催しております。これまでに延べ25回、155人の方が参加・受講されました。
  受講される方の多くは、個別にテーマを抱えていることが多く、概論を飛ばして解決法を求めがちですが、私共の主旨は、自分で問題の解決を図れる力を身につけていただくことですから、段階を踏んだ講義にもお付き合いいただいております。これまで受講された方の中には、このような私共の主旨にご理解を頂き、受講後地域の中であるい はご自身の活動を通じて、新しい受講者をご紹介 くださる方もいらして、様々な方面に少しずつ輪が広がっているのではないかと実感しています。
  尚、内容等の詳細については当センター司書が雑誌(「薬学図書館」、「第18回大学図書館研究集会記録」、「みんなの図書館」等)等に発表しておりますので、そちらをご覧いただければと思います。


2 市民利用制度
 当センターでは、大学図書館の所蔵する資料を必要とする市民等学外の方に、これまでも閲覧・複写のサービスを行なってまいりました。平成14 年9月2日からは、これまでのサービスに加え所蔵資料の貸出(4冊、2週間)とレファレンスサ ービスを含めたサービスを新たに「市民利用制度」 として開始しました。制度の利用に際しては、横 浜市内に在住または在勤の希望される方に市民利 用カード(カード代金500円、1年間有効)を作成・登録していただきます。制度の詳細は、当センターホームページ「市民利用制度のご案内」をご覧ください。

http://opac.yokohama-cu.ac.jp/lib/shimin/shiminuser.htm

 現在約130人の方々が登録され、その半数の方は金沢区在住ですが、市内全域からもご利用いただいております。利用目的分野は、約8割の方が人文社会科学系、約2割の方が自然科学系となっています。また、年代構成は20代から70代まで、幅広い構成となっています。現在(平成15年9月末)までに延べ約650人の利用がありました。


3 日曜日利用
 更なる市民へのサービスを拡充するために、検討を進め、平成15年9月28日から日曜日の市民開放を始めました。これは、平日の夜8時までに来館できない、ご家庭の方や社会人の方にもご利用いただくために始めたものです。

まとめ

 大学図書館は、学術資料すなわち知的財産の宝庫ですが、それは利用されて始めて宝となるものです。学術資料の利用については、これまでともすると大学の内に向かってのサービス中心に対応してきた感があります。しかし、知的財産は地域社会を含めた広い社会の中で活用されてこそ、より価値を生み出すものです。市民の利用は、個々人の調査研究、生涯学習など個人的な学習意欲に応える事はもとより、NPO・NGOなどのグループ(法人等)による活動にも貢献できるものと考えます。社会人の利用にあっては、本人の学習のみならず企業の経営や研究開発などにも貢献できます。それらの成果はやがて市民の心の豊かさや、横浜の地域社会・経済を豊かにするものと信じております。
  『知は大学だけのものではない』これが私共の原点です。これらの視点に立ち、そのノウハウを含めて大学の学術資料を公開・共有し、広く市民社会へ活用していただくことを期待します。この小さな一歩の踏出しが、本学から発信されやがて大きな成果を携えて再び横浜に戻ってくるようなうねりとしての『知の連鎖』が起こればと考えて います。最後に、神奈川県図書館協会の依頼により、当センターの取組の一端を、館種を超えて紹介できることは、誠に光栄に思うと共に、改めて感謝いたします。

<横浜市立大学学術情報センター  荒井 稔 岩元 重紀>

(更新:2012年3月26日 15時15分)