協会報(~239号)

相模原市の大学図書館と公立図書館の相互協力

2012年3月15日 14時00分 [管理者]
●相模原市の大学図書館と公立図書館の相互協力


 
平成6年4月1日、相模原市立図書館2館と相模原市内にある5大学8図書館及び1大学校1図書館との間で相互協力の協定が締結され、一定の手続きにより、一般市民が大学図書館を利用できるようになりました。

 協定大学図書館…麻布大学附属学術情報センター/和泉短期大学附属図書館/北里大学(医学・理学部・看護学部・教養)図書館/相模女子大学附属図書館/女子美術大学図書館/職業能力開発総合大学校附属図書館

 相互協力の内容は、大学図書館への紹介状の発行、本の相互貸借、相互複写、レファレンスとし、利用に当たってはそれぞれの図書館の利用規則等(レンディングポリシー)の定めるところによるとしました。
 相互協力による効果としては、それぞれの分野の専門資料を市民が利用できる道が開かれた、大学相互での資料の利用ができるようになった、また地域に開かれた図書館として、大学のイメージアップにつながる等でした。

 開始までの経過としては、市立図書館側からの働きかけで、大学図書館等との打合せを平成5年3月から行い、当時既に相互協力を行っていた藤沢市総合市民図書館と慶應義塾大学湘南メディアセンターを視察させていただき、検討を重ね、その後市の庁議を経てスタートしたわけです。
 図書の受け渡し方法をどうするか、将来物量が増加した場合の配送方法の検討など、課題もありましたが、実際には紹介状を発行して、市民が希望の図書館を日時を限定して利用するという方法がほとんどで、図書の貸借は現在までほとんどありません。
 複写サービスについても、受け渡しの方法、金銭の授受をどうするか等を検討し、市立図書館側の受け入れ態勢を整えて開始しました。しかしこちらも、市民が大学図書館に直接出向いて複写サービスを受ける方法が定着しています。

 相互協力を円滑に行うための組織として、相互協力連絡会を持ち、年に3回ほど会議を開催し、毎年度始めにレンディングポリシーの確認を行うほか、会議ごとに、利用内容の報告、最新情報の交換、会場となった図書館の見学などを行っています。運営は、市立図書館1館、北里大学4図書館から1館、他大学から1館の3館が幹事館として1年間受け持ちます。

 平成6年から14年度までの相互協力件数は、市民の大学図書館利用件数が累計で446件、大学か らの利用が51件と、大学を利用させていただくほうが圧倒的に多い状況です。
 平成14年3月からは、隣接している八王子市内の2大学(東京工科大学・多摩美術大学)図書館と相互利用協定を締結しました。
 平成13年9月に、市立として3館目の橋本図書館が開館しましたが、上記の2大学の学生等から、橋本図書館利用の要望が多く寄せられ、(大学からの交通の便がよい点などが理由として考えられる)市立図書館としても、市民や同大学生等の利便を図るため、大学側に働きかけ、相互利用協定を締結しました。
 また、平成15年4月、市内淵野辺に新キャンパスを開設した、町田市の桜美林大学と相互協力協定を締結しました。
 この場合は、市立図書館側から大学に働きかけ、また、桜美林大学としても、地域とのかかわりを考えていたところでもあり、相互協力協定を結ぶに至りました。なお桜美林大学は、市立図書館を通しての利用だけでなく、大学図書館として地域開放を始めました。(登録料1年間1,000円)現在はこのサービスを利用する人のほうが多いようです。
 この市外3大学に在籍する学生、教職員は、相模原市民でなくても市立図書館での個人貸出が受けられるようになりました。

 現在では、これまでの市内6大学を含め、9大学図書館との相互利用により、各分野の専門資料の利用やレファレンスなど、市民サービスの向上が特段に進んでいると思います。
 なお市内大学のうち、職業能力開発総合大学校は、一般開放を行っています。(身分を証明できるものを提示すれば誰でも利用できる)

 今後の課題としては、近年発生した大阪池田小学校の児童等殺傷事件以後、大学側としては外部の出入りに気を配らざるを得ない状況で、地域に開かれた大学を目ざす点と安全確保との兼ね合いに苦慮している点などがあげられます。
 市立図書館としても、紹介状を発行する際には、18歳以上の市立図書館登録者であることを条件とし、利用の際には各大学の利用規則を守るようお願いしています。
 これからの展望としては、幾つかの課題はあるとしても、より地域に開かれた大学図書館として、地域開放を行う大学がふえ、市民サービスがより一層向上することを期待しています。

<相模原市立図書館 簾 信子>