協会報(~239号)

情報リテラシーセミナーへの取り組みと広報

2012年3月21日 10時10分 [管理者]

情報リテラシーセミナーへの取り組みと広報 -神奈川大学図書館の現状―
  

神奈川大学図書館 湯田 篤範


少し前までの図書館は、主に図書や雑誌などの紙媒体資料を中心に収集保存し、利用者への閲覧・貸出サービスを行ってきた。しかし、近年の情報通信技術の急速な発達により、そのあり方が大きく変容してきている。紙から、オンラインデータベースや電子ジャーナル、CD-ROM、DVD-ROM等の電子媒体資料への移行である。現在誰でもが使っているGoogleやYahoo等も、情報検索の一つのツールに数えられるだろう。今大学図書館は、学術情報のメディア化、データベースの活用、研究情報の共有や外部への発信など、さまざまな面で転換期にあり、「総合学術情報センター」へと移行しつつあるといえる。それに伴って学生は、従来の本を中心とした情報収集から、電子媒体資料からも情報を得なければならない時代になってきた。そこで必要となってきたのが、オンラインデータベースなどを使いこなす能力の養成、いわゆる情報リテラシー教育である。ここでは、本学で行っている情報リテラシー教育の内容と、オンラインデータベースセミナーの広報の方法について紹介したい。

現在神奈川大学図書館では20以上のデータベースを契約し、図書館ホームページから提供している。これらは、それぞれの分野、目的に応じて構築されており、図書情報、雑誌記事・論文情報、新聞記事情報、法律・判例情報、辞書・事典情報などがある。検索結果の内容によって、論文・記事などの全文が見られるもの、その論文記事などが、どの雑誌の何巻・何号・何ページに掲載されているかという情報までのもの、図書・雑誌などの資料を所蔵している機関を調べるものなどがある。またデータベースは、国内のものばかりではなく、海外のものも多数あり、世界規模で情報を得ることができる。

さて、実際のセミナーであるが、現在大きく分けて前期と後期に1~2週間に渡って実施しており、前期を入門編、後期を応用編と位置づけている。セミナーを実施した主なデータベースは、LexisNexis、日経テレコン21、日経BP記事検索サービス、BOOKPLUS、JapanKnowledge、LEX/DBインターネット、法律時報文献月報、ロー・ライブラリー、JDreamⅡ、eolESPer、LEGALBase、法律判例文献情報、聞蔵など新聞記事データベース、理科年表・化学書資料館データベースなどである。また、電子ジャーナルのScienceDirect、EBSCOhost、JSTOR、ProQuestなども行った。更に、理工学部の協力を得て実施しているSciFinder Scholarのセミナーも開催した。

対象は教職員、大学院生、学部生で、個人でもゼミなどグループ単位でも申し込めることになっている。場所は、主に図書館内にある情報リテラシーセミナー室で実施している。このセミナー室にはパソコンが15台設置されていて、パワーポイント等を利用した片側方向ではなく、パソコンを利用した、よりリアリティ豊かな利用ガイダンスを行えるようになっている。参加人数が多い場合は、図書館視聴覚ホールや本館の大会議室で行うこともある。講師は、主に各データベースを提供している会社から派遣されている。

広報の方法としては、全教員のメイルボックスにチラシを入れる、図書館のホームページに載せる、ポスターの掲示、学生用電子掲示板などが挙げられる。新入生には、1年生の前期に行うFYS(FirstYear Seminar)授業の中で、図書館員が図書館の利用方法を含めOPACの使い方や、データベースの紹介を行っている。また、この講義に即した情報リテラシーテキストを作成し新入生に配布している。

オンラインデータベースの使い方や利用するメリットを教えるのが、まさに情報リテラシー教育であるが、なかなか参加者が集まらないという切実な問題がある。それは、データベースの導入期とは異なり、ある程度周知され目新しさが薄れてきたことが原因の一つとして考えられる。受講者に、いかにデータベースの利点や内容に関心を持たせ、セミナーへ参加させるか、その実施方法の改善が急務になっている。

その改善策の一つとして、各学部学科に特化したデータベースセミナーや教員の授業内容に即したデータベースセミナーを、図書館員の手で ユーザー側の教員サイドと相談しながらすすめている。複数のデータベースセミナーを横断的に行えるように内部体制を整えていかなければ次なる発展はなく、一人ひとりの教員をはじめ、学部学科のコンセンサスを得られるよう地道に推しすすめるしかないと考えている。

*神奈川大学図書館のホームページ
http://www.kanagawa-u.ac.jp/library/

(更新:2012年3月29日 11時21分)