協会報(~239号)

ホームページの再構築について

2012年3月21日 10時23分 [管理者]

ホームページの再構築について  


横浜開港資料館調査研究員 平野正裕

 

 横浜開港資料館は、25万点をこえる内外の歴史的文書・記録、古写真・絵はがき・浮世絵などの画像資料、図書・雑誌など、多様な資料を一般公開する施設である。その調査研究員としての業務は、調査・資料収集・整理・研究・展示・執筆・出版・講演・資料提供・各種催事など、実に多岐にわたる。
 横浜開港資料館がホームページの再構築に着手したのは、平成17年秋である。それまでのHPは、年4回の企画展示の際に更新されていたが、館報や講座・講演会のお知らせ、新刊書・新商品などが掲載される程度であり、しばしば旧い情報が削除されないままであった。それは、開港資料館の多様な業務を伝えるにはまったく不十分、3ヶ月間変化のないHPから受ける印象はひとことで言えば「停滞感」。指定管理者制度導入と時期を同じくしていた事もあり、今日的広報手段であるHPを改善しなくてはならないとの危機感があった。従来は広報担当の仕事であったHP事業を、調査研究員の側で引き受ける決断
をして、根本から見直す作業にとりかかったのである。
 HP再構築の手始めは、HPの設計図とその数年にわたっての拡充計画を一覧表にすることであった。現在公開されているHPは、進捗のいかんはあるものの、ほぼその設計図にもとづいている。しかし、新規HPは難産であった。横浜開港資料館が属する「横浜市ふるさと歴史財団」のホームサーバーに、HP制作会社側からアクセスできない、という連絡には暗然とした。これは、ホームサーバー自体が、セキュリティを考慮してかなり堅牢な仕様でつくられていたことが理由であったが、コンピューターという未知の世界、専門業者でも解決できない問題の存在、長くつづく制作作業を思うと、神経がすり減った。約4ヶ月遅れて平成18年8月にHPはリニューアルされた。トップページは、画面が動き出すような華やかさはないが、落ち着いた品格のあるデザインになった。
 設計図の作成段階で込めた思いは、開港資料館のメッセージが人に伝わるようなものにしたいということであった。その具体化として、高村直助館長による「開港150周年と横浜開港資料館」を掲載して、今を生きる人々にとっての開港資料館の役割についてのメッセージを発信した。また、メールマガジン配信を想定し、あるいは記事によって掲載期間を長期、短期と自在にできるように、“What's New”の記事を1件1件独立して掲載できるようコンテンツ内部を細く区分けした。アクセス解析ソフトを導入して、HP独自の広報戦略を立てられるデータを得るようにした。また、視覚弱者のための読み上げ
ソフトに対応するページづくりをした。
 その他、コンテンツとして、「閲覧室で御覧になれる資料」は所蔵資料の概要を、「よこはま事始め・よくある質問Q&A」は横浜の歴史ミニ情報を公開。「所蔵資料を出版・映像等でご利用になりたい皆様へ」は、年間500件近い数に上る、資料の図書・映像などへの利用申請を円滑化させるものになっている。基礎から見直したHPであるから、改良点は数限りない。また、これらはすべて今後、拡充する方向にある。
 HPを運営するうえで大切なのは、なによりも発信側の主体性であると考える。自分たちの仕事の「ここを見て欲しい」「ここが大切なのだ」というものをきちんと配信する。アクセス解析で判明したことであるが、新たな大型情報の掲載は、確実にアクセス
数に反映する。メッセージも大切で、「開港150周年と横浜開港資料館」は、利用者に最も読まれるページである。この1年間をつうじて、全体として月5000件台~9000件台のアクセス数があり、資料情報の拡充は、さらに多くのアクセス数を呼ぶものと思われる。
 国の機関では、資料そのものを画像としてネット配信する水準に手が届いているが、残念ながら開港資料館ではそのような見通しはない。開館以来四半世紀、蓄積された資料整理の実績はぼう大であるが、手書き目録・カード目録からワープロ、各種パソコンソフトとさまざまである。数年前の政府の緊急雇用対策事業費で手書き目録・カード目録の一部をデータ入力したが、なお不統一が残る。また、さきに示したホームサーバーの堅牢性も、「サイト内検索」をはばんでいる。
 指定管理者制度のもと、開港資料館は所轄当局より入館者を増やすことを課題として突きつけられている。HPが利用者の便に資するとともに、入館者の拡大を同時に叶えるような、戦略的運営が今後の課題である。

横浜開港資料館のホームページ→http://www.kaikou.city.yokohama.jp/