協会報(~239号)

大学図書館の一般開放 -専修大学の場合-

2012年4月20日 14時10分 [管理者]
特集:大学図書館の一般開放

大学図書館の一般開放 -専修大学の場合-  

専修大学図書館 布施 達志

《経緯》

 専修大学の図書館開放の契機としては、思い起こすと二つの局面があげられる。一つは、平成11年に文部省生涯学習審議会により答申「学習の成果を幅広く生かす、生涯学習の成果を生かすための方策」が公表されて以来、社会人の再教育を含む生涯学習への対応、産業界との連携・協力、地域社会に対する貢献など、大学に対する社会の要請が増大したこと。もう一つは、大学とその所在地の行政体との連携・協力という観点である。社会人あるいは地域住民への学習機会の提供は、本大学の21世紀に向けての将来構想ともからみ戦略的課題であり、当時から全学的な議論の高まりが求められていた。
 そうしたなか、本大学が近隣住民(地域自治会)とのお付き合い、あるいはパートナーシップ関係を構築していく過程で、地域自治会からの要望もあって図書館開放に向けた検討に着手。平成15年7月には近隣9自治会への図書館開放(登録手数料は無料、5冊・20日間の貸出)に踏み切った。その後、文教都市にふさわしい地域社会づくりを目指し、多摩区内に立地する3大学(専修、日本女子、明治)と川崎市(多摩区)とが、平成17年12月に協定を締結して「多摩区・3大学連携協議会」を設立。これを契機に本大学図書館は川崎市立多摩図書館との相互協力協定の覚書を締結し、平成19年4月より多摩区在住・在勤の方に図書館を開放することとした。登録手数料は無料とし、貸出はこれまでと同様5冊・20日間とした。平成19年度の利用登録者は240名、貸出冊数は2,120冊、平成20年度は231名、2,420冊である。利用者のなかには、大学の図書館が利用できることを理由の一つに近隣に引っ越して来たという方もいるなど、多摩区民には浸透している。

《図書館開放の拡大》

 多摩区民に図書館を開放して以来、麻生区、高津区といった近隣の地域住民からは、多摩区民のように利用させてもらえないかとの問い合わせが度々あった。それへの対応、対象拡大の方策に腐心していたが、そのさなか神奈川県立図書館および神奈川県立川崎図書館との連携・協力の機会に恵まれ、また、2年に亘る多摩区民の受入対応を体得したこともあって、生涯学習の発展と、本大学の教育・研究の発展に寄与することを目的とした相互協力協定の覚書を締結する運びとなった。平成21年4月より運用を開始し、県立の図書館の「図書館カード」を持参すれば本大学図書館を直接利用できるものとした。貸出は多摩区と同様5冊・20日間とし、登録手数料1,000円を徴収することで、本大学と密接な協力関係にある多摩区とは差異化を図った。
 立地条件(小田急線・向ヶ丘遊園駅下車)からか、PR不足からなのか、平成21年7月末現在の利用登録者は14名と多くはないが、特定の図書を求めて遠方から来られる方や多摩区以外の近隣にお住まいの方の利用があり、今後利用の増加が見込まれる。

《対策と課題》

 地域住民への図書館開放に限らず、夏期休暇期間の中・高生を対象としたオープンライブラリー、地域住民向けでもある企画展示といった事項においては、個別に目標を掲げ、それを達成するために予算措置や担当職員の配置などを含めた態勢づくりを進めている。図書館開放により、学内者の利用に不都合が生じていないか、館内のセキュリティ対策は十分なのかなどの点に関しても、常に状況が把握できるような対策の一環として巡回の強化、人員の補強等一部では実行に移している。
 今後は、利用の状況を見守りつつ、さしあたり以下の2点に取り掛かりたい。先ずは、利用者がどのような目的で、どのように利用しているか、どのような要望があるのか等に関する詳細な把握が可能となる方法を検討していく予定である。その詳細な把握によって、160万冊を超える蔵書の効率的な利用の観点から、対象を絞り込んだ、例えばシニア層にはそれに適した情報検索講習会を開催するなど、効果的なサービス提供が可能になる。次に、いいサービスを提供し続けたとしても、利用者が増えるとは限らない。だからリピーターを確保し続けながらも、できないことは何かを含め、どのような魅力あるサービスを保証するのかを一段とわかりやすく広報していきたい。ポスター一つをとっても、それを見たとたんに興味をそそられ、問い合わせや利用してみたくなる。そのような尺度でもって見直し、広く浸透させていきたいと考えている。