協会報(~239号)

インターネットと図書資料を駆使した情報検索術講座の試み

2012年3月15日 15時57分 [管理者]
●特集:図書館と情報リテラシー

インターネットと図書資料を駆使した情報検索術講座の試み  五島哲男


1 「電子図書館へ向けた第一歩」という位置づけは大げさでしょうか

 今回の講座はちょっと大げさになりますが、電子図書館へ向けた重要な第一歩と位置づけられるのではないでしょうか。
 電子図書館への道は、3つの部分に分けることが出来ます。第1に、コンピュータ等機器の設置と通信回線の接続。第2に、この環境を使って利用できる資料やサービスの提供。第3に、利用者とこれらの新しい環境や資料を結びつけるレファレンスサービスの提供です。
 今回の講座はこの第3の部分に含まれる情報リテラシー向上のための試みと位置づけることが出来ます。この第3の部分は図書館職員が知恵を出し、利用者との対話を繰り返しながら作り上げていかなければならないものですが、まだはっきりとした姿が見えてきていません。そこでこの未開拓で重要な部分の一歩だったのではないかと自画自賛しているのです。


2 位置づけと比較すると講座内容はまだ基本レベルです
 講座では調査対象の例として「判例」、「政府資料」、「新聞記事」等を取り上げ、それぞれについて①活字のレファレンス資料の紹介、②ネット上のレファレンスサイト紹介、③レファレンスサイトの使い方の説明、④レファレンスサイトの操作体験を行いました。また、信頼できるサイトかどうかの判定する視点として、①作成者、②情報ソース、③更新頻度、④アクセス数を紹介しました。さらに「新聞記事」のところでは、たんなる事実の確認や特定のテーマについて多くの情報を集める時にはネット上の新聞で充分であり、特定の事柄について詳しい記事を探すときには活字記事のほうが向いているという両者の使い分けについても説明しました。
 講座の位置づけが大げさの割にはたったそれだけ、という声が聞こえてきそうです。確かに講座内容はまだ発展途上で改良の余地がたっぷりと残されています。


3 参加者に役立つ研修でした
 アンケートから参加者の反応を探ってみましょ う。なお、アンケートは参加者60人のうち57人から回答いただいたものです。
「講習で紹介した情報源で、普段から使っていたものはありましたか」と聞いたところ、大部分の人が「まったくない」と答えるか、取り上げたサイトの一つか二つを書いているだけなので、新しい情報を伝えたことが分かります。
  今回の講習で知って、今後利用しようと思うものはありますか」という質問に対して「ある」とか、具体的な情報源名を上げた人が65%で、回答が少なめになる自由記述方式の質問形式であることを考慮すると、役立つ情報を伝えることが出来たと評価できます。
 また、アンケートの他の記述欄では、このような講座をもっと開催してほしいという声や時間を長くしてほしいという声が多く寄せられました。


4 講座を充実するには
 好評を得られたとはいえ、今回の講座はまだ最も基本のもので、いっそうの充実が求められます。その方向としては次の5つが考えられます。
 ① 多様なレベルの講座、②図書とネット情報の組み合わせに関する講座、③調査プロセスに合わせた情報源の発見と最適な組み合わせ方の講座、④インターネット上の講座開催、⑤講座企画と成果に関する情報交流
 講座の対象としては今回の参加者よりレベルの高い人たちもいます。他方、蔵書検索端末もうまく使えない人たちもいます。多様なレベルの講座が必要です。また、調査はネットで十分と考えている人が多いなかで図書資料と組み合わせることの効果や、調査のプロセスに応じた最適な組み合わせの方法を伝えることは電子図書館の使命では ないでしょうか。来館する時間の取れない人たちを対象にネット上の講座を開くことも考えなければなりません。そして、それぞれの図書館でレファレンスに関する講座を企画し、成果の情報交流を行い、現代の情報リテラシー向上に貢献していこうではありませんか。

   いつしまてつお(横浜市中央図書館 調査資料課)