協会報(~239号)

司書も歩けば棒に当たる~サイエンスカフェのPRを巡って

2012年3月21日 09時33分 [管理者]

司書も歩けば棒にあたる~サイエンスカフェのPRを巡って  


神奈川県立川崎図書館 大久保 弥

 

☆イベント開催に至るまで
 県立川崎図書館では昨年度延べ約70回の講演や講習などイベントが開催されました。こうしたイベントの開催こそが「図書館から利用者への情報発信」と言えますが、ここではその中のサイエンスカフェ[1]というイベントの広報活動に絞って「技と工夫」(と言えるほどのものかどうかわかりませんが)について述べてみます。
 当館は産業と科学の情報ライブラリーとして、工業、科学技術系の専門書の他にも入門書を約6千冊集めて「やさしい科学コーナー」を設置しています。今回の講座ではこのコーナーの利用拡大につながるような科学の入門的な内容で、という注文がつけられていました。そこでTVで紹介されていたサイエンスカフェに目をつけたのです。

☆広報活動の実際
 広報媒体としては、図書館ウェブサイト、県のたより(広報誌)、地域ミニコミ誌、科学系雑誌の情報欄(ウェブサイトもあり)などの他にもサイエンスカフェポータルサイトというものがあり、情報を掲載してもらいました。 
 また、県からA2判ポスター120部とA4判のチラシ用紙3000枚の予算[2]がついていたので、県内公共図書館や、近隣の高校、市民館、生涯学習関連施設、科学館などに配りました。チラシは増刷を重ね、結局約7000枚を配布しました。
 さらに、報道機関を通じての広報にも取り組み、地元の新聞支局を回りました。徒歩圏内に新聞各社の川崎支局が集中していて、その点は楽でした。その結果、東京新聞、神奈川新聞(2回掲載)タウンニュース川崎区版で記事が掲載されました。
 約1ヶ月前から本格的に広報活動を始めましたが、一向に参加者は集まらず、苦戦していましたが、ある時川崎駅東口地下街アゼリアの壁面に市職員募集などのポスターが貼ってあるのに気づき、経営母体の川崎地下街という会社に頼みに行ってみると、公共機関のものなら無料でOKということで、2ヶ所に快く貼ってくれました[3]


 

その他にも、近所の団地へのポスティングにトライして不審者扱いされ、通報されそうになったりもしました。電柱などをポスタージャックしようかとも考えましたが、さすがに止めました。

☆広報の効果
 アンケートの結果から見ると、県のたよりとポスター、チラシを見ての参加が半数を占めていました。特にアゼリアのポスターは効果があり、当日見て参加を申し込んできた人もいました。
 そもそも、普段科学になじみのない(ITにも同様の)人たちに科学に親しむ機会を持ってもらおうという意図の企画でしたので、紙媒体による広報が有効だったのでしょう。
 2年目の今年は、昨年と同様の広報に加え、昨年参加者にダイレクトメールを送るなどした結果、第1回は30名、第2回は定員の倍の60名と、順調に参加者数を伸ばしています。

☆まとめとして
 「広報=public relations」は現代用語の基礎知識には、「個人ないし組織体で持続的または長期的な基礎に立って、自身に対して公衆の信頼と理解を勝ち得ようとする活動」と定義されています。広報の技を磨くことも大切ですが、「公衆の信頼と理解」に値する図書館の活動をしっかりと構築していくことが大切なのだと思います。ただコーヒーが出るだけで、講演会と何ら変わらないと指摘されるサイエンスカフェもあると聞きます。県立川崎図書館では、科学技術に関する新たな情報提供、交流の場としてサイエンスカフェを一層充実させていきたいと思っています



[1] コーヒーを楽しみながら、第一線で活躍している科学者の講演を聴いたり、直に質問をしたりして楽しめるカフェ。研究者が大学や研究所から街中へ出て、市民と交流する新しいコミュニケーションのあり方として注目されている。

[2] 実際についていたのは2色刷りポスター印刷代と、A4用紙代だけで、ポスター、チラシのデザインとチラシの印刷は自前で行った。

[3] アゼリアは1日約25万人の通行者がいる。参考までにJR川崎駅でのポスター掲示は、B2サイズ、7日間で19,000円。

(更新:2012年3月21日 09時36分)