協会報(~239号)

広がる輪、つながる輪~一冊の本から~

2012年3月21日 09時42分 [管理者]

ひろがる輪、つながる輪-一冊の本から  


横浜女子短期大学図書館 原 真由美

 

すべての利用者に向けて

 横浜女子短期大学は、学生数407名の保育科単科の短期大学です。学校は小規模ですが学生一人当たりの貸出冊数は34.8冊の“元気”な図書館です。図書館報の創刊は1987年4月、2007年7月号で126号を迎えました。館報は学生図書委員を通して全学生に配布しています。「欲しい人だけもらえばいい」という学生の声も聞きますが、本を読まない学生や、図書館をあまり利用しない学生にも読んでほしく、利用する学生としない学生の両方に向けて同じように情報を伝えたいからです。

 

情報共有の場へ

 特に毎回特集を組んでいるわけではありませんが、夏休み、クリスマス、卒業など、季節毎に読んで欲しい本の紹介や、図書館ガイダンスの日程、利用統計などの情報を掲載しています。以前は教員から学生への推薦図書が多かったのですが、最近は学生の原稿に絞り、友人同士情報共有の場になるように学生を対象とした編集方針へと変更しました。「友だちにすすめたい本ベスト3」として紹介したコメントや、実習先(保育所、幼稚園など)で体験した子どもたちと本の関わりの様子、読み聞かせをして喜ばれた絵本や紙芝居の紹介などが好評です。

 

学生参加型の図書館報

 かつての学生は、本をよく読み、読書の楽しさを知っていましたが、最近の学生の利用傾向は、課題や実習のための教材がほとんどです。このような偏った利用をどう修正していくかと考えたとき、本をよく読む学生に、読まない学生をリードしてもらいたいと考えました。興味深いのは、普段本を読まない人が、読んでいる人の影響を受けることです。人に紹介したりされたりしながら刺激を受け、読書をする動機づけとして他人の刺激の大切さがわかります。図書館から「本を読みましょう」と言われるよりも、学生同士すすめあった本の原稿を読むと身近に感じるようで、「ベスト3」に選ばれた本などは不思議と読みたくなるようです。読書を通してコミュニケーションが生まれることを願って、書き手を学生の中から発掘し、学生参加型の図書館報を作成することにしました。

 

生の声を聞く 

 毎年、年度末に図書館利用に関する満足度のアンケートを実施していますが、その中に「図書館報」の質問項目を設けています。全体的に、満足度はそれほど高くありませんが、不満もそれほどありません。しかし具体的な不満点に「読まない」「欲しい人だけもらえばいい」「字が多い」という記述も多くあります。中には「内容はよく図書館を利用したり、館報を読んでいる人ではなくて、利用しない人や読まない人を対象に作った方がいい」という意見もあります。頻繁に利用する学生と、そうでない学生の図書館に対する関心度に大きな開きがあることがわかります。このように利用者の声を直接聞くことができるのは、小規模図書館の利点です。

 

 学外へ向けて情報発信

 本館の学生の利用は、先に述べたとおり実習や課題のための教材がほとんどです。それも良いのですが「図書館に行けばおもしろい本がある」ということを感じてもらえるような紙面作りが課題です。今までは館員が編集を行ってきましたが、これからは学生による自由な編集も考えています。また今までは学内向けに発行してきましたが、今後は卒業生を始め学外の人も閲覧できるよう、ホームページ上で公開していきたいと考えています。本館のように単科の小規模な図書館は、学生の利用傾向がはっきり手に取れるので、図書館報も編集しやすいのが特徴ですが、アンケートの結果をどう反映させていくのかもこれからの課題です。図書館の活動内容を利用者に広くお知らせし、理解を深めてもらい、図書館を有効活用できるような紙面を作っていきたいと思います。