協会報(~239号)

神図協小史点描(32)

2012年3月21日 11時17分 [管理者]
神図協小史点描(32)

                   会友(元神奈川県立図書館)池田 政弘

 協会組織再編へ
 昭和53(1978)年に協会50周年記念大会が県立音楽堂で盛大に挙行された。その年に協会のあり方が問われ「基本問題検討委員会」が設置された。さまざまな角度から検討された結果をふまえ、理事会等で充分な審議を経て5常置委員会と特別委員会制度を発足、昭和60(1985)年にはその体制がととのった。 その後平成元(1989)年に「ネットワーク研究委員会(のちの推進委員会)」が新設され、10年以上にわたり協会は常置委員会5、特別委員会3の体制で多様な活動を展開してきたのであった。
   しかし、図書館をめぐる環境は激変していた。博物館、図書館等の社会教育施設の管理を、地方自治法第244条の規定に基づき、法人等に委託していくというケースがそれである。また図書館サービスの多様化、高度化に伴う、電子情報等へのアクセスに関わる経費の受益者に負担を求めることの適否、さらに地方公共団体の財政的課題からくる経費削減による人員減の問題等の現実が、協会にも厳しくのしかかっていたのである。
  そのために新たな課題に即応できる体制作りが求められていった。当時特別委員会の位置付けの問題や協会加盟団体の財政的逼迫、また人員削減による活動参加館の限定等の問題が散在していた。平成7年度から県の補助金が全額カットされることもあり、県協会の財政のあり方、委員会のあり方等、時代のニーズに合った検討が必要であるとの認識もうまれ、企画委員会内では議論がおこなわれていたことでもあった。
  当時の福知孝企画委員長は、平成8年度の課題として神図協会報177号(平成8(1996)年7月)に委員会の活動の再検討及び、協会財政を検討するとの方向で考えていきたいと記している。その後もたびたび企画委員会ではこのことが議論されたが、先送りの状態となることが多かった。
  財政的課題については協会財政の一割強を占めていた県からの補助金カットの問題もあり、早急に検討が行われた。(『神図協小史点描28』会報217号参照)しかし、各委員会の再検討については先延ばしとなっていた。
   神図協70周年記念大会も成功裡に終わり、課題となっていた委員会見直しと再編のための検討は、企画委員長の諮問委員会として「委員会再編諮問委員会」(平成12年1月設置)の設置を決め、4名の委員により精力的に研究協議が行われた。平成12年3月には「答申書」を委員長に提出。その要点は次のようなものであった。
1. 企画委員会の権限・機能の強化
2. 時限委員会として特別委員会の明確化
3. 常置委員会を企画・広報・研修・大学図書館問題調査の4委員会とする
4. 書誌・郷土資料編集・児童奉仕研究・ネットワーク推進の各委員会は廃止する
5. 新しい課題に対しては、企画委員会が随時特別委員会ないしワーキンググループ(WG)を設置して対応する

  このような内容の「答申書」を加盟館に送付し意見の集約を行う。また各委員会の意見も集約して企画委員会案を作成し、理事会、総会に提案して平成13年度から新体制の委員会で活動していこうとするものであった。
  最終的に企画委員会としては1:企画委員会、2:広報委員会、3:研修委員会、4:大学図書館委員会、5:郷土出版委員会の5常置委員会を組織することとして、理事会、総会にはかることとなった。
  企画委員会は「諮問委員会」から答申を受けた4常置委員会にプラスして郷土資料編集委員会と書誌委員会を郷土出版委員会に改編して常置委員会とすることにした。これは神奈川県図書館協会が戦後再出発し、その後協会体制が充実してくるにしたがい、神奈川という郷土に根ざした資料、つまり一般の出版社では発行しないようなものを再発掘し、編集し、発行することにより、県民に広く郷土のことを知ってもらうという主旨のもとに生まれた郷土資料編集の重要性を考慮したこと、また、協会から予算的に独立して、出版事業を行いたいという「郷土資料」発行の当初の考え(数十年経ても実現せず)もあって、郷土出版委員会を常置委員会としたものである。
   一方、このように「委員会」のあり方を検討するなか、「協会のホームページ」作成の検討、さらには平成12年6月に神奈川県議会定例会本会議一般質問において、図書館運営に関係する質問中、県立図書館及び市町村立図書館の多くの図書館で、収容能力を超えている状態にあり、その解消の為県教育委員会が検討している県立高校再編整備と結びつけて、県と市町村共同で運営する「デポジット・ライブラリー」の設置の提案がなされた。
   この質問に対し、県当局は神奈川県図書館協会に調査研究をしてもらいたいと答弁した。 協会に加盟している参加館も同様の課題を抱えていたこともあり、早速企画委員会の中に「デポジット・ライブラリー構想検討プロジェクトチーム」を 設置した。
   このように、新たな課題に対応していくための体制へと「協会」は動き出していったのである。
(更新:2012年3月21日 11時27分)