協会報(~239号)

電子ジャーナル

2012年3月15日 10時04分 [管理者]
電子ジャーナルを使ってみる ―HighWire Pressを例に―

横浜国立大学附属図書館 鈴木 隆雄


はじめに
 電子ジャーナルとは、一口で言えば、冊子体のジャーナルを電子化してインターネットで利用できるようにしたものです。電子化しネットワークにのせることで、論文の検索やメールでの目次配信等、従来の冊子体のジャーナルにはなかった便利な機能が実現しましたが、先端的な技術を応用して更に有用な新機能を盛り込む等、電子ジャーナルは現在も進化の只中にあります。
 今回ご紹介するHighWire Pressの電子ジャーナルは、米国スタンフォード大学図書館が学会や大学出版局と共同で提供するサービスで、STM(科学・技術・医学)の分野で評価の高いジャーナルを中心に300誌以上をカバーしています。2002年10月9日現在、この中には、発表後半年~2年を経たものが無料となる127誌、期間限定で無料使用できる14誌、完全無料の15誌が含まれており、計43万件以上の論文が無料で利用できます。大学や研究所等の電子ジャーナル購読機関に所属していない人でも手軽に利用できるので、入門用に適した電子ジャーナルといえます。

実際の利用について
 図1はHighWire Press のトップページ(http://highwire.stanford.edu/)です。このページの中央の白いエリアから論文の検索やブラウジング(拾い読み)ができるようになっています。


図1

 面白いのは、ページ中央のBrowse articlesの個所にあるTopicMapというソフト(図2)で、マウスをクリックしたりドラッグすることで、視覚的に学問分野の木構造に沿って主題を絞り込んでいき、主題関連論文のリストを表示できるようになっているものです。トピックとサブトピックとの間での移動がアニメーションで行われる様は一見の価値があると思います。


図2

 検索も簡単です。例えば、今夏米国で猛威を振るった西ナイルウィルスとその媒介である蚊についてふれている論文を検索するとします。ページ中央のQuick searchでKeywordsの箱に"west nile virus mosquito"と入れてgoボタンをクリックすると、たちどころに検索結果一覧が表示されます。無料で全文が読める論文については、"this article is FREE"と表示されます。
 検索結果の中に、"Isolation of West Nile Virus from Mosquitoes, …"という1999年12月のScience誌掲載の無料で読める記事があったので試しにこれを読んでみるとします。(Science誌の場合、刊行後1年を過ぎると無料で読める記事がありますが、オンラインでのPartial Access利用登録(無料)を行う必要がありますのでご注意ください。)
 この論文記事の場合は、Abstract、Full Text、PDF、Citation Mapの4つの選択肢があります。Full TextまたはPDFを選択すると論文全文が読めます。非常に興味深いのはCitation Map(図3)で、論文の引用・被引用関係が図示され、論文(HighWire提供誌収録のものに限られますが)の影響の過程を目で辿っていくことができるものです。


図3

おわりに

 今回ごく簡単にご紹介したHighWire Pressの電子ジャーナルには、他にも色々な特色がありますが、とにかく定評のあるタイトルが無料で使えるという点で、最初に電子ジャーナルに触れてみるには格好の材料かと思います。(なお、有料のジャーナルについても論文単位で購入可能(Pay-per-view)です。)

(更新:2012年3月15日 10時13分)