協会報(~239号)

障害者・高齢者宅配サービス事業3年目を迎えて

2012年3月15日 13時15分 [管理者]
●障害者・高齢者宅配サービス事業3年目を迎えて

 藤沢市の図書館では、図書館に来館することができない障害者や高齢者(65歳以上)の方々を対象に、市民ボランティアの協力を得て、図書館資料を自宅まで届ける宅配サービス事業を平成13年度から開始しています。開始初年度は市民図書館4館の所在区域を中心とした5地域で開始しました。サービスを開始するにあたり、当初ボランティアの方が集まるかどうかが心配でしたが、100人以上の応募がありました。応募していただいた方々は、普段から図書館をよく利用している方が多く、本が好きなこと、読書の楽しみを分かち合いたい、人のために何か役立ちたいというボランティア精神が旺盛で、あらためて市民の図書館への関心の高さを知らされました。
 当初、利用者登録42人に対し、40人のボランティアによって活動を開始しましたが、平成14年度には、11地区にある市民図書室も拠点にした全市域へとサービスの拡大を図り、14年度末には利用者登録78人、活動ボランティア62人に増加しています。1人のボランティアの方には、1~2人の利用者に宅配をお願いしています。
毎回、同じ方が担当しますので、利用者も安心してお願いできますし、ボランティアの方も利用者の本やCDなどのリクエストの傾向などもわかるので、本の宅配だけでなくリクエストもその場で受け取ってきてくれます。はっきりした書名がわからなくても「こんな感じの本が読みたい」と言われれば、職員が一緒に考えたり、個々の要望に応じた図書リストを作成し、その中から選んでいただいたりもしています。また、ボランティアの方は拠点となる図書館(室)に近く、利用者宅にも近い方にお願いしているので、地理にくわしく自転車や徒歩で届けていただいています。そしてボランティアの方々からの意見をききながら、職員と連携しながら日々運営をしています。
 ボランティアの方は、利用者が待っているからと、暑い日も雨の中でも本を届けてくれます。このような市民の方の力がこの事業を支えているのだとあらためて思います。
 利用者として登録されているのは高齢者の方が多く、「いままで図書館に通っていたが、足が不自由になり外出できない」、「家の中だけの生活なので本があるということが生きがいになっている」などの感想がきかれます。このような利用者のリクエストは、小説・エッセイの他に写真集や社会事情の話題がすぐわかる雑誌や趣味の雑誌などの要望が多くあります。
 また、視覚障害をお持ちの方は、いままで図書館を利用することがなかった方が多く、このサービスを通じて図書館を知っていただくことができました。リクエストは、物語の朗読、歌謡曲や落語などのCD、カセットが主です。
 このように、利用者の方々は宅配日を心待ちにしていて、本を届けるとついつい話し込んでしまうボランティアの方も多いとか。このサービスの基本は人とのふれあいにあると思います。より多くの人に、平等なサービスを提供できれば、「だれもが自由に利用でき、最新の情報を提供する生涯学習の場」という図書館の役割の一端を果たせると考えています。
 平成15年度は宅配サービス事業を開始してから、3年目を迎えています。この宅配サービス事業の展開がこれからの団体配本業務に大きく係わってくると考えています。藤沢市は平成9年度末に自動車図書館「そよかぜ号」による貸出業務を廃止し、その後は図書館に来館することが困難な高齢者・障害者等が多い福祉団体を中心にBM車(ブックモービル)による団体配本を行っています。しかし、排ガス規制等環境問題を考慮し、福祉団体との調整をはかり、理解を得たうえで、BM車による団体配本業務を廃止する方向で検討に入っています。これも、この宅配サービス事業の充実が裏付けされなければ、実現できないことです。
 そのためにも今後、利用者の拡大に努め、図書館を中心にボランティア・利用者・職員が連携を密にしながら、市民と協働で築くこれからの図書館運営を充実させていかなくてはなりません。
 この宅配サービスが図書館を中心に「人の輪」「読書の楽しみ」「生活を豊かにすること」の一助になればと願っています。

<藤沢市総合市民図書館 青木 滋彦>