協会報(~239号)

橋本図書館のビジネス支援サービスについて

2012年3月19日 14時28分 [管理者]
橋本図書館のビジネス支援サービスについて

 1 はじめに
 橋本図書館では、周辺に工場が多く、インキュベーション施設「さがみはら産業創造センター」も近くにあることから、平成13年の開館当初からビジネス関連図書の充実を図っていました。
 こうした背景のもと、市の産業振興課からの働きかけにより、「起業したいが、ビジネスに関しては専門知識のない初心者である」人を対象に、起業に必要な基礎知識の提供や、アイデア段階の構想を具体化するための窓口として、当館では平成16年6月から「ビジネス支援サービス」を開始しました。

2 ビジネス支援サービスについて
 市の産業振興課と共同事業として実施しているビジネス支援サービスの内容は、次の4点です。
①ビジネス支援コーナーの設置
 (ビジネス関係の一般書・約8000冊、参考資料・約700冊を別置、パンフレット類設置)
②オンラインデータベースによる情報提供
 (マルチメディア体験室コーナー設置の端末8台のうち1台を本サービス専用とし、新たに契約した「日経テレコン21」が閲覧可能)
③ビジネスに関するレファレンスの実施
 (平成17年度87件)
④ビジネスカウンセリングの実施
 (ビジネス相談員によるカウンセリングを実施、相談員はNPO法人に委託)
 以上の中で、通常の図書館業務から見ると少し特殊な「④ビジネスカウンセリング」について、次に詳しく述べることにします。

3 ビジネスカウンセリングの概要
 ビジネスカウンセリングは予約制により、平成18年8月からは土曜を含む月4回実施しています。相談時間は1時間以内、相談場所は録音図書コーナーの一角で、実施当日にパーテーションで仕切って即席の相談室を作っています。
 カウンセリングはNPO法人「相模原エスティアート」に委託していますが、法人のメンバーである相談員は、それぞれが起業して会社を経営している現役なので、その経験と専門知識を活かしながら、相談者と同じ目線に立って親身にアドバイスをしています。また、必要に応じて図書館員が関連資料を準備するなどレファレンスも併せて行っています。
 また、年4回、税務や会計等についてのビジネス講座も「エスティアート」主催(橋本図書館協力)で開催しています。

4 ビジネスカウンセリングの現状
 相談件数は、平成16年度24件(月2回)、平成17年度85件(月3回)と年々増えています。
 相談内容は「子供服のお店を出したい」「趣味を活かして自宅でパン教室を開きたい」「定年後に仲間とパソコン指導のNPOを設立したい」など、起業・創業に関する相談が全体の67%を占めています。継続的にカウンセリングを受ける相談者も多く、事業計画書やチラシ作成等の宿題を持ち帰り、出来上がった書類を持って再度来館する人もいます。
 中には、商工会議所等の専門機関に相談に行ったが、自分の考えをうまく説明できずに挫折してしまった人が、当館へ相談に来て、実際に起業できたという例もあります。「なんとなく起業したい気持ちはあるが、どうして良いかわからない」という人にとって、身近な図書館は敷居が低く、気軽に相談できる雰囲気があるようです。

5 ビジネス支援サービスの課題
 公共図書館としての立場から無料相談を行っていますが、現実には、自身も起業家である相談員が無料で提供できる情報には限界があります。中には、たとえ有料でもさらに専門的・高度な指導を受けるべき事例もあり、今後は専門機関の紹介のほか、産業振興課と協議の上で個別に対応していく体制作りが必要になります。
 また、委託した法人からは「将来的には図書館員がカウンセリングを」との要望もありますが、カウンセリングの場に同席した実感としては、起業経験がなければ助言できないことも少なからずあり、現状では難しいと思われます。
 今後、データベース講習会の実施や、情報探索ツールの作成を行うなど、図書館に何がどこまで出来るのか、主体的に関わる方法を検討していくことが重要だと思います。