協会報(~239号)

指定管理者制度のもとでの図書館経営

2012年3月22日 11時52分 [管理者]
特集:多様な図書館経営-いろいろな形態のマンパワーを活用して
指定管理者制度のもとでの図書館経営  


綾瀬市立図書館 小林 耕平

はじめに
 神奈川県内で初めて、公立図書館に指定管理者制度が導入された綾瀬市立図書館を株式会社有隣堂が運営しています。
 民間企業5社が応募し、提案内容等により当社が選定されたもので、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間の管理運営を行うことになりました。指定管理者の図書館運営の現状については、次のとおりQ&Aで説明します。

Q1:指定管理者が行う業務の範囲は?
A1:綾瀬市の場合、指定管理者が行う業務は、建物の維持管理をのぞく運
   営全般です。具体的には、
    ①図書館サービスに係る業務等
    ②綾瀬市教育委員会などからの調査業務
    ③危機管理業務
    ④事業計画書、収支報告書及び事業実績報告書の作成
    ⑤その他報告書の作成
    ⑥図書館システム基幹管理業務
    ⑦図書館システムの日常業務等
   です。

Q2:市が行う業務は?
A2:綾瀬市では、教育委員会生涯学習課が図書館の所管となっており、司
   書資格を持つ担当者が1名配置されています。生涯学習課の事務は、
    ①図書館の事業計画の策定
    ②図書館事業予算の策定
    ③図書館の施設改修計画等の策定
    ④図書館の指定管理者の選定作業
    ⑤図書館資料の選書及び除籍の承認
    ⑥行政財産の目的外使用許可
    ⑦綾瀬市図書館協議会の庶務に関すること
    ⑧国・県・県央等の各種連絡協議会等の負担金の支払に関すること
    ⑨その他市が定める図書館業務等
   です。

Q3:図書館を運営する職員は?
A3:当社が図書館に配置した職員は、契約社員6人(うち庶務担当を除き
   司書5人)、アルバイトスタッフ19人です。これらの職員で、図書館
   本館や図書館の分室3か所の運営及び逓送業務・図書の装備等を行っ
   ています。庶務担当者以外の契約社員は、いずれも公共図書館勤務経
   験者を採用し、アルバイトスタッフのほとんどは綾瀬市立図書館の非
   常勤嘱託員として勤務していました。

Q4:図書館サービスは向上したのか?
A4:当社が応募時に提案した基本方針や事務事業計画により図書館を運営
   しています。市民の利便性の向上を図るため、開館日を48日増やし、
   さらに、夜間開館実施曜日を週1日増やしました。図書館事業につい
   ては、今までの事業をすべて継続した上で事業の拡大を図り、季節の
   おはなし会や図書館探検等の新規事業にも取り組んでいます。
   平成20年度の利用状況では、貸出者数で14.4%増、貸出し点数は12.9
   %増となりましたが、図書館サービスの質の向上を図り、顧客満足度
   を高めることを目標にしています。

Q5:資料の選書はどのように行っているか?
A5:毎週月曜日に選書会議を開催しています。
   見計らい選書、リクエスト分の選書、出版情報による選書等を1週間
   分まとめて選書します。選書した資料リストは翌日に教育委員会へ申
   請します。
   また、図書資料の除籍については、月締めで翌月の選書会議に図り、
   教育委員会に申請します。
   なお、資料費は同額を確保しています。

Q6:図書館の運営基準はあるか?
A6:図書館業務を遂行するに当たっては、図書館条例・施行規則や市の定
   めた図書館運営基準・各種要項等があります。なお、条例や規則によ
   り付与されている指定管理者の権限の範囲で運営要項やマニュアルを
   新たに策定することができます。

Q7:行政に対する図書館業務報告はどのようにしているか?
A7:市には、月報や年度報告書を提出します。また、上半期の図書館活動
   報告会や通年の図書館活動報告会を開催しています。なお、年度毎の
   図書館事業報告書を作成し提出しています。

Q8:職員の研修はどうしているか?
A8:本社での研修、県立図書館や県図書館協会主催の研修参加、他の図書
   館への視察研修などに積極的に取り組んでいます。図書館内では、毎
   月館内整理日に行われる全体会議で随時必要な研修を行っています。

Q9:民間事業者として図書館業務に生かせるノウハウはなにか?
A9:書籍流通ネットワークの活用、接客力、実績主義の人材の登用などが
   あります。

Q10:指定管理者制度の課題はなにか?
A10:指定管理者制度導入に当たり様々な問題点が指摘されますが、指定管
   理者制度を活用することは図書館運営の選択肢の一つです。効果的に
   導入するには、メリットが経費の節減だけであってはならず、なによ
   りも民間の知恵とノウハウを生かした運営で図書館サービスを向上さ
   せることが最大のメリットであると、自信を持って市民に言えるよう
   になることが一番の課題であると思います。