協会報(~239号)

国立国会図書館の見学会に(研修委員として)参加して

2012年3月22日 12時11分 [管理者]
研修委員会見学記

国立国会図書館の見学会に(研修委員として)参加して  


神奈川県立川崎図書館 森谷 芳浩


 研修で他の図書館の見学会に参加し、建物の佇まいや閲覧室のレイアウト、所蔵資料の特徴、職員や利用者の様子などにふれると、見慣れた同業者の施設であっても、どこか新鮮さを感じるものである。また、自らのどこか澱と停滞の日々から逃れる解放感もあって、気を取り直して新たに仕事に取り組む意欲や、普段思いつくことのなかったアイデアが生まれてくるといった、リフレッシュ効果の見込まれるところにも見学会の利点があるのではないかと思う。
 その見方からすると、見学先として人気がある国立国会図書館というのはどう判断したらよいのだろうか。当たり前のことだが、国を代表して時代の変化に対応し、充実していかなければならない図書館である。所蔵資料の電子化をめぐる構想をはじめ、メディアを通じて伝えられるその動向は、多くの人の注目を集めている。一方、地方自治体が経営する公立図書館はどうか。これは図書館に限った話ではないが、厳しい財政状況にあって、人も予算もなるべくかけずに、どれだけのことができるのかが試されている。国立国会図書館とはいえ人や予算が無尽蔵ではないとしても、そもそも一自治体の図書館とは比較の対象ではないだろう。圧倒的な物量と空間に、ただ感心するだけで見学を終えてしまう可能性があったと思う。
 その点、今回の研修は午前に館内見学を終え、午後はレファレンスをテーマに、参加者それぞれに用意された端末で例題を解きながら、講義をいただく形となった。図書館業務経験の少ない人を受講対象者に含めていると事前に伝えていたため、まずは、利用者に回答する際に留意する点などをお話いただいた。具体的には、本やインターネットをはじめ多くの情報が溢れているが、その信頼性を考慮したうえで回答するといった、基本的な対応の仕方である。
 次に、5月にホームページ上で公開されたばかりの「リサーチ・ナビ」を紹介いただいた。これは、国立国会図書館の職員が調べものに有用であると判断した資料、ウェブサイトなどを紹介していたページ(「旧名称:テーマ別調べ方案内」)に、効率よく誰もが情報にたどり着けるよう配慮したインターフェースを加え、再構成したサービスである。「リサーチ・ナビ」のコンテンツのひとつとなった「調べ方案内」には、例えば“・・・について調べる”といったテーマ設定があると、その解説に加えて参考となる資料やウェブサイトの概要がまとめられている。図書館員にとっては、レファレンスの下調べとして、ポイントを押さえた知識を得られるとともに、先行調査の参照ともなるので、調査にかかる手間と時間が省かれる。インターネット時代にふさわしく、レファレンス業務を効率よく進めていく上でも欠かせないサービスといえよう。もちろん一般に公開しているので、職場に戻ってからも活用できるのである(もっとも、私たちのカンは鈍り、またネット上に優秀な図書館員がいることになるので、仕事は減るのかもしれないが)。
 以上のような内容を振り返ると、今回の研修のポイントは、見学をあくまでも導入部として、むしろそこにある資料や情報の活用を学ぶために、「現地」の利用が効果的である点を見出せたことではないかと思う。今後の研修を企画していく上で参考となる事例になったのではなかろうか。