協会報(~239号)

図書館の業務委託について

2012年3月22日 12時10分 [管理者]
特集:多様な図書館経営-いろいろな形態のマンパワーを活用して

図書館の業務委託について  


伊勢原市立図書館 風間 誠司


 伊勢原市は、平成17年度の行財政改革推進計画に基づき、効率的で質の高いサービスの提供と経費削減のため、平成21年4月から図書館運営業務の一部について業務委託を行い、5月から開館時間の拡大を行いました。
 サービス向上として開館時間の延長を選んだのは、利用者アンケートで最も要望が高かったためで、平日、全フロアーについて、午前9時から2時間延長した午後7時までを開館しています。
 委託業務の範囲については、段階的な業務委託を行い、その成果を検証した上で、指定管理者制度等を導入すべきであるとの図書館協議会の提言により、初回は、一般、児童、レファレンス、視聴覚コーナーの各カウンター業務、及び予約サービス業務、返却督促業務、相互貸借と自主事業の補助業務などの内部業務を委託しています。
 図書館業務の執行体制につきましては、業務委託前は、市職員12名(再任用職員1名を含む)、嘱託職員6名、臨時職員11名の計29名体制であったものを、業務委託後は、市職員は4名削減した8名、受託事業所の雇用総数は、23名で合計31名という人員体制でスタートしています。
 この業務委託による経費の節減については、4名分の市職員の人件費と嘱託・臨時職員17名分の人件費が減り、業務委託費や開館時間の延長に伴う施設管理費の増額となる分を引くと、年間推計で約400万円を超える額の経費節減が図れることとなります。なお開館時間の延長に伴う市職員の時間外勤務の人件費を抑えるため、本市の一般事務職では初めてとなる勤務時間をずらした2交代制を採っています。
 また、本市の業務委託の特異のケースとして、4名分の市職員を削減し、他部署へ異動させることから、例年4月に行われている市職員の人事異動と業務委託の開始時期を合わせる必要があり、3月中旬の議会の予算承認、委託契約の入札、契約の締結、落札業者への事務引き継ぎなど、非常に短期間で、処理せざるを得ませんでした。しかしながら、幸いにも当初心配した利用者とのトラブルもなく、今日まで順調に業務が執行されています。 直営方式から業務委託へと移行した経過を振り返りますと、昨年度に図書館に異動してきたばかりで、また運営業務担当ではなく、直接関わりのない施設の維持管理業務の方の担当であることから、十分な知識が乏しいということもあるのでしょうが、全面的な業務委託や指定管理者制度の導入について、反対や危惧を感じている理由が未だに理解できていません。この理由は未だ色々ありますが、その大きな一つに、各自治体図書館には、臨時職員が配置されていますし、業務委託している自治体の委託範囲は、窓口業務と内部業務とに大きく分けた場合、様々となっています。つまり、このことは、必ずしも市職員が行わなくてもよい業務が図書館業務の中にあるということですし、また、各自治体における図書館業務の内容が根本的に変わりがないことを前提としますと、広く図書館業務を全体的に看た場合、図書館業務のほとんどについて、外部委託等が可能で問題なく処理されているということがいえると思います。本当に図書館業務を外部委託できないのであれば、各自治体の事情が少しずつ異なっているとしても、業務委託されているその内容が各自治体とも同じようになってしかるべきだと考えます。
 話が変わりますが、業務の一部委託方式は、俗に言われている「偽装委託」、つまり職業安定法に抵触する危険性を秘めています。行政側から直接、受託事業所の責任者以外の者に指示できないことは当然なことですが、委託する業務の範囲を間違うと、得てして行政側が行う直営業務と業者が行う委託業務が、直接的にも、間接的にも同時に関わり合ってしまう恐れがあり、お互い意識すればするほど、利用者にとっては、手が空いているのに市の職員は受託業者のスタッフの手助けもせず、対応してくれなかったなどと映ることです。こうしたことを改めて感じることは、近い将来には、全面的な業務委託や指定管理者制度を導入した方が、本市の財政や図書館の施設規模からすると最善な方策ではないのかと感じています。
 今や100円を出せば、本の購入や、DVDの借入、音楽のダウンロードが可能で、自宅において簡単、且つ瞬時に知りたいことが数万件規模で知ることができ、紙を使わない「携帯小説」がベストセラーになる時代です。また、最近のマスメディアや著名な小説の中にも、純粋な読書欲からではなく、只単に時間潰しのため図書館に行ったなどというコメントや表記がされていることも目に付きます。こうした急激な社会変化から、図書館が持つ存在意義や目的も間違いなく大きく変わってきていると感じますし、図書館は生活支援施設やアミューズメントマガジン(娯楽施設)で構わないのではないのかとさえ思えてきます。
 本市では、今年の10月から、新たに駅前に図書の返却ができるようにし、現在、視聴覚ライブラリーのあり方について、検討を重ねている状況です。まだまだ分からないことが多く、今後も聡明で先駆的な各自治体の動向に注視していきたいと思っております。