協会報(~239号)

相模原市立図書館における課題解決型サービスの取り組みについて

2012年3月23日 14時22分 [管理者]
特集:課題解決型サービス ~公共図書館と大学図書館~

相模原市立図書館における
課題解決型サービスの取り組みについて

  

相模原市立橋本図書館 亀山 幸


 公共図書館が地域の情報拠点としての役割をますます求められる中、住民が持つニーズを個々に解決するための、「課題解決型サービス」を実施する館が増えています。
 私の所属する相模原市立橋本図書館は、JR横浜線橋本駅に隣接する商業ビルの6階にあります。アクセスがよく、社会人の方も利用しやすいという立地を生かし、開館当初から「ビジネス支援サービス」を展開しています。

  


橋本図書館の入口  

 具体的には、ビジネスに関連する蔵書を重点的に収集し、またそれらの資料のブックリストを作成して利用者の方が求める本を手に取りやすい環境を作っています。
 また、他機関との連携も行い、より幅広いサービスに努めています。例えば、市の産業・雇用政策課と連携し、関連するパンフレットの収集や情報収集を積極的に行っています。また、ビジネスに関する相談に専門の相談員が対応する「ビジネスカウンセリング」を相模原市産業振興財団と共催するとともに、豊富なビジネス資料を生かし、ビジネスに関するレファレンスも積極的に行っています。
 近年は雇用状況の悪化に伴い、就職率も落ちていることを受け、昨年度からは「就職支援サービス」を始めました。豊富なビジネス関連資料を生かし、資格の取りかたや面接のマナーなど、就職に結びつくような本のブックリストを作成し、配布しています。
 この就職支援サービスに関しても、市の就職支援センターなどと連携し、就職に関するパンフレットなどを積極的に収集・配布しています。また、ハローワークの求人情報や新聞折込みの求人情報などを常置することで、就職活動中の方に役立つ情報を提供できる環境を作りました。
 このように書くと、そうは言っても予算がない中でそのような新規のサービスの実施は難しい、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、例えば新しい本が購入できなくても、所蔵している本をテーマ別にまとめてブックリストを作成したり、テーマに沿った展示を行うだけでも、利用者の方の目を引き、本の利用につなげることができます。
 例えば相模原市立図書館では、スペースも予算も限られている中で、新たに「健康・医療情報サービス」の取り組みを始めています。
 下の写真のように、本棚の一角を使い、小さな展示スペースを設置し、テーマにそった本を集めたブックリストを置くことで、利用者が本を手に取りやすい環境を作っています。公共図書館が地域の情報拠点としての役割をますます求められる中、住民が持つニーズを個々に解決するための、「課題解決型サービス」を実施する館が増えています。

  


本棚での展示の様子  

 
 また、公共図書館であれば、母体である自治体の様々な機関と連携していくということも考えられます。相模原市の図書館では、健康・医療情報サービスの取り組みの一環として、精神保健福祉センターで行ったアルコールについての啓発キャンペーンと連携し、相模原市内の図書館全館でアルコールに関する本の展示を行い、利用者への啓発を行いました。
 今までの公共図書館は、本をそろえて利用者が来るのを待っている、というような「待ちの姿勢」でしたが、インターネットが発達した情報社会においては人々の本離れも進み、それだけではなかなか図書館利用に結びつきません。
 住民の身近にある公共施設として、図書館自らが積極的に情報を収集・発信することにより、図書館が住民にとっての情報拠点になっていければと思っています。