協会報(~239号)

研修会レポート②「鎌倉市の図書館~いままでとこれから~」

2012年3月23日 14時31分 [管理者]
研修会レポート②

「鎌倉市の図書館~いままで(百周年を迎えて)と
これから(市立図書館における電子書籍導入の課題)~」
  


(10月19日実施)

 本研修は鎌倉市腰越図書館 中田館長による「鎌倉市図書館のいままで」についての講演から始まった。発見された写真や実際の図書資料を見ながらわかりやすく行われた解説では、関東大震災による図書館の倒壊から再建まで、一時的な利用の有料化、貸出返却のシステムの採用など図書館の歩みが語られた。創立当初から市民とともに歩んできた鎌倉市図書館では、その集大成ともいえる百年史を先日刊行したという。
 鎌倉市図書館では昭和49年からフォトチャージングシステム(写真を利用した貸出システム)を全国に先駆けて導入した。ただし、このシステムには写真を現像するまでにタイムラグが発生するなどの問題点があった。その経験からか図書館システムのオンライン化は遅かったという。
 そんな鎌倉市図書館が満を持して取り組んだのが電子書籍だ。実証実験という形での試験導入については鎌倉市中央図書館 古谷館長によってメリット・デメリット、さらにはその成果物であるガイドライン案の解説が行われた。鎌倉市図書館が電子書籍の実証実験を行った理由としては、図書館としての歴史があり、百年史の件でもわかるように利用する市民の意識が高く、図書館の規模も大きすぎず小さすぎなかったことが決め手だったと、古谷館長は語る。
 この実験は、総務省の「新ICT 利活用サービス創出支援事業」に採択されるなど、プロジェクトとしても成功を収めている。
 本研修では約30名の来場者があったが、実証実験時のデジタル化方式の質問があるなど、電子書籍に関する図書館界の注目度は高い。
 Kindle、iPad2など専用端末も続々登場している電子書籍業界。古都鎌倉で行われた実証実験が今後どのような広がりを見せていくのかに注目していきたい。

(専修大学図書館 恒次 知美)

  
(更新:2012年6月8日 11時17分)