協会報(~239号)

図書館での授業あれこれ

2012年3月23日 14時23分 [管理者]
図書館での授業あれこれ

専修大学 斎藤 雅彦


   専修大学には人文・社会科学系の7学部があり、川崎市の生田キャンパスでは法学部2年次以上を除く約16,000人の学生が学んでいます。このキャンパスの図書館には、約125万冊の蔵書があります。
 図書館での授業ということでは、30年以上も前から、映像教材を視聴覚閲覧室で上映することが行われていました。これは、図書館にある資料と施設を授業で利用する、ということであり、視聴覚室の“設備”を図書館に求めたものに過ぎません。視聴覚施設を備えた教室が増加するとともに、授業の多くが、そちらを利用するようになりました。
   10年ほど前には、ある学部で情報リテラシー関連の科目として図書館ツアーを組みいれた授業が開始されました。そのうちの1コマを図書館職員が担当して、OPAC で蔵書の検索方法を教えたり、図書館のなかを案内したりしました。初年次教育が重要視されるようになると、このように図書館を“舞台”とした授業が各学部に急速に広がり、1年次を対象とした基礎ゼミナールなどで、OPAC 検索の実習を伴う図書館ツアーを全クラスで実施するようになりました。学生がOPACを操作し、目的の図書を書架から取り出してカウンターまで持ってくる、という実習を行います。毎年4月下旬から6月は、このような授業が毎日のように図書館で展開されています。
   今年になると、これまでとはまた違った光景が見られるようになりました。図書館を“素材”にした授業が行われるようになった、ということです。これらの授業は、教員(場合によっては学生)が内容を組み立て、図書館が協力するというスタイルです。そのうちの二つほどを紹介します。

 (1)図書館ツアー
   学生が図書館ツアーを行う、という授業です。この授業を受けている学生たちは必ずしも図書館に興味を持っている人たちとは限りません。「図書館ツアー」という課題を与えられた学生は、まず、ツアーのための基礎知識を得なければなりません。これまであまり図書館を利用していなかった学生も、疑問に思っていることなどをまとめて、図書館職員にインタビューをしたり、普段はあまり目にすることのないバックヤードなども見学したりして、ツアーの構想を練ります。このようなことを数回行い、図書館に関する知識を自分自身のなかで構築したうえで、ツアーに必要な情報を組み立て、実践となります。
   図書館職員は、彼らが必要とする情報を与えていくだけですので、最終的にどのようなツアーになるかは、学生次第となります。

 (2)カフェイベントとデジタルサイネージ
   演習科目「プロジェクト」のひとつで、図書館で情報を相互発信して新しい交流の場を作る、という企画を立てました。閲覧室の一角でカフェイベントを実施し、さらにその告知を含む図書館情報をデジタルサイネージ(電子看板)で発信しようというものです。「プロジェクト」では、教員と学生たちが話し合いながら企画を決めていきます。学生からは、彼らが作った企画書をもとに、自分たちが何をしたいのか、図書館にどのような協力を求めたいのか、といった内容のプレゼンテーションがありました。こちらとしても、最大限の協力はするつもりで臨みますが、できることとできないことははっきりと伝えました。
   協議の結果、通常は飲食禁止としているスペースでのカフェイベントの開催と、デジタルサイネージとして貸出回数の多い図書の紹介、職員の自己紹介、学生のツイッターなどの表示をすることに決まりました。これに関わる機器は、学部が用意し、図書館の前に仮置きとしました。
   これらのような課題解決型授業に対しては、いまのところ図書館としても試行錯誤しながら対応している、というのが正直なところです。ただ、従前のような、求めに応じて資料を提供するだけのルーティン・ワーク的な支援だけではこと足りない、ということは言えます。あたりまえなことですが、重要なのは、図書館が教員と綿密に連携し、何を目的とした授業を意図しているのかをはっきりと理解したうえで、適切なサービスを提供するということです。これからは、学生と図書館が、ともに刺激を受け、ともに成長していくことになると思います。