協会報(~239号)

デポジット・ライブラリーの基本的機能と経費

2012年3月15日 10時29分 [管理者]
デポジット・ライブラリー推進特別委員会
●デポジット・ライブラリーの基本的機能と経費


1 はじめに

 平成12年6月の神奈川県議会本会議において、県立高等学校再編整備にともない発生する空き教室を有効に活用した市町村と県との共同で運営する「デポジット・ライブラリー」(以下「DL」という。)の整備の可能性についての質問があった。県教育長から当協会の場などで早急に検討したい旨の回答があり、県教育部長名で当協会に調査研究の依頼がなされた。
 協会は、平成13年4月に中間報告を県教育部長あて提出した。また13年度にはいり、DLについてさらに研究を深めるべく「DL推進特別委員会」(以下「委員会」という。)を協会内に設置し、2年にわたって調査をすすめることになった。
 委員会は、平成13年度における研究の成果を本報告としてまとめ、平成13年9月に県教育部長あて提出した。14年度には、DLの機能についてさらに細かくつめるとともに、運営するのに要する費用の積算と各図書館の経費負担等を中心に検討した。その研究の成果を最終報告としてまとめることができた。
 以下、DLの基本的機能と各図書館の経費負担について、その概要を述べてみたい。

2 DLの基本的機能
 【図書資料の収集】
 DLでは、市町村図書館で除籍した図書資料のうちから、保存する価値を有し、かつ県立2図書館で所蔵していないものを収集する。
 その手順は、

1.保存する価値のある図書資料と廃棄する図書資料を仕分ける。
2.Web-OPACを検索し、県立2図書館所蔵図書資料との重複チェックをおこなう。
3.県立2図書館で所蔵していない図書資料をDLへ搬送する。

となる。
 この冊数を、図書は約15,200冊、雑誌は約200タイトルの2,400冊、合計約17,600冊と積算した。ここまでの作業は市町村図書館がおこなう。

【図書資料の整理】
 DLのファイルについては、県立の図書目録ファイルにDL所蔵館の項目を追加して、県立図書館と県立川崎図書館の3館の総合目録形式として構築する。図書資料の整理の手順は、

1. 国立国会図書館の蔵書目録のCD-ROM版であるJ-BISCからダウンロードし、必要なデータを県立図書館のコンピュータにとりこむ。
2.とりこんだデータにDL図書資料のローカルデータを付与する。
3.J-BISCに収録されていない図書資料を独自入力する。

となる。
 なお雑誌についてであるが、市町村図書館では貸出して利用に供している。この経緯をふまえて、DLにおいても貸出対象の資料とする。雑誌のデータは、J-BISCには収録されていないので、独自入力となる。

【図書資料の予約・貸出・返却】
 DLは市町村図書館に対して貸出・返却をおこなう。図書資料の貸出・返却は県立図書館の宅配便システムによっておこなう。予約・貸出・返却の手順は次のとおり。
1.市町村図書館はWeb-OPACを検索してDLの所蔵を確認する。
2.DLに所蔵図書資料の予約をする。
3.DLは県立図書館を経由して宅配便で図書資料を予約館に貸し出す。
4.予約館は県立図書館を経由して宅配便で図書資料をDLに返却する。

3 コンピュータ・システム
 DLの業務はコンピュータにより遂行する。
 DLのコンピュータ・システムを構築するにあたっては、KL-NETと有機的な連携をはかり、KL-NETの機能を最大限活用した効率的なシステムとする。
 具体的には、DLのファイルを、県立の図書目録ファイルにDL所蔵館の項目を追加して、県立図書館と県立川崎図書館の3館の総合目録形式として構築する。コンピュータで処理する業務をあげれば次のとおりである。

  ○図書資料の整理
  ○利用者登録
  ○予約
  ○貸出
  ○返却

上記業務を遂行するために次のハードウェアを設置する。
  ○端末機1台
  ○プリンター1台
  ○県立図書館と接続する通信回線

また、次のソフトウェアを用意する。
  ○オンライン業務用ソフト
  ○バッチ処理用ソフト
  ○CD-ROM用ソフト

4 職員
 DLでは、年間約15,200冊の図書と、約200タイトルで冊数に換算すれば約2,400冊(図書1,200冊分に相当)の雑誌を受け入れて整理する。また市町村図書館からの予約に基づき貸出・返却業務を処理する。以下、おもな業務を列挙すると次のようなものがある。

 ○図書資料の受入
 ○図書資料の整理
 ○図書資料の配架
 ○予約処理
 ○図書資料の貸出(宅配便)
 ○図書資料の返却(宅配便)

 上記業務を処理するためには、非常勤職員1名、補助職員1名が必要である。また勤務日数については、火曜日から金曜日までの1日勤務とした。
 ただし、当初は図書資料の収集の段階から出発するので、いきなり業務量が増えるわけではない。軌道にのるまでは、まず

1. 非常勤職員1名による、火曜日から金曜日までの半日勤務
2.非常勤職員1名による、火曜日から金曜日までの1日勤務

と3段階を踏んでいくこととした。

5 市町村図書館の経費負担
 DLの運営方法として、神奈川県図書館協会による運営と、市町村と県との共同運営の2方法を検討したが、ここでは後者による場合に要する経費を積算してみた。
 積算するにあたっては、空き教室の利用にさいしての維持費用等の経費と、経費のうちのコンピュータ初期費用については県で負担するものとした。またランニングコストについても約半分を県が負担し、残りの半分を市町村図書館が分担するものとした。
 分担するにあたっては、図書の蔵書冊数が多い図書館は図書の除籍冊数も多いであろうという想定のもとに蔵書冊数の規模に応じて分担する方法を提案した。『神奈川の図書館2002』により、10万冊単位にくくってクラス別に図書館数を計上すると下表のようになる。

 図書の蔵書冊数図書館数比率
 1万~10万未満25x
 10万~20万未満312x
 20万~30万未満3x
 30万~40万未満4x
 40万~50万未満5x
 50万以上6x
 合計77 

 いま最少単位の分担金の金額をx円とし、10万冊増えるごとに分担金が倍になるように重みづけをおこなった。そして、DL運営の次の3段階別に積算した。

1.非常勤職員1名による、火曜日から金曜日までの半日勤務
2.非常勤職員1名による、火曜日から金曜日までの1日勤務
3.非常勤職員1名、補助職員1名による火曜日から金曜日までの1日勤務

 細かい計算については別途報告をお読みいただくことにして、結果をしめすと下表のようになった。

図書館分担金Ⅰ分担金Ⅱ分担金Ⅲ
1万~10万未満5,8008,70011,600
10万~20万未満11,60017,40023,200
20万~30万未満17,40026,10034,800
30万~40万未満23,20034,80046,400
40万~50万未満29,00043,50058,000
50万以上34,80052,20069,600

6 おわりに
 以上、2年間にわたる検討の結果をDLの基本的機能と経費負担を中心に述べてみた。財政逼迫という厳しい環境ではあるが、みなさんの賛同のもと、DLの実現にむけて一歩一歩前進することを願って、本委員会の活動報告としたい。

<委員長 逗子市立図書館長 草柳庄一>