協会報(~239号)

研修とホスピタリティ

2012年3月19日 11時30分 [管理者]
研修とホスピタリティ
 座間市立図書館   葉山 敦美

 唐突ですが、図書館司書とソムリエを比べてみました。ソムリエはワインや料理の知識を裏づけに、客のその日の体調や様子などから場に合った料理やワインを的確に提供し、最終的に顧客に満足してもらう、さらにリピーターになってもらうようなサービスを行います。そしてそれを貫いているのが「もてなす心」つまりホスピタリティです。司書もソムリエ同様豊かな知識に裏付けられたサービス職と言えるでしょう。以下で研修について少しばかり述べさせていただきますが、われわれのサービスの根本にはホスピタリティが必要だと言うことを忘れないようにしたいものです。
 さて今なぜ改めて研修か、というと次のような点が考えられます。
・窓口委託や指定管理者制度など司書の働く場が狭まってきている。
・インターネットの普及等により、図書館員の相対的優位性が崩れ、実質的なスキルアップが求められている。
・図書館の運営について経営的感覚が求められるようになってきている。
 それでは実際にどのように研修が行われているのでしょうか。最近私が講師として参加させていただいた国立教育政策研究所社会教育実践研究センター(以下、社研)主催の「図書館司書専門講座」と、日本図書館協会(以下、日図協)主催の「2005年度中堅職員ステップアップ研修(2)」
の中の「図書館サービス計画の(企画)立案」の
様子を再現してみます。
 まず、サービス計画の意義や策定方法の講義の後、1班4~6名程度のグループに分かれ演習を開始します。社研ではグループ毎にモデル館を決め(グループのメンバーの1人が所属する図書館)、日図協ではあらかじめ定めた図書館をモデルにサービス計画を策定していきます。サービス計画のテーマを何にするかは、事前に希望をきいて班分けをしておきます。各班では自治体の概要や図書館の位置付け、ミッションやビジョンの策定、テーマに沿った現状分析、問題点や課題の解決方策の策定、解決方策を年次計画への落とし込みといった作業を行います。最後に発表を行い終了となります。
 メンバーが知恵と知識と能力を絞り、ある時は予定時間を大幅に超えて、社研では午後9時過ぎまで、日図協でも午後7時過ぎまでサービス計画を策定している姿は、感動的でさえあります。そして、その結果得られたシミュレーションもレベルが高く、かつ現場でも役立つようなものが出来上がっています。これは、受講者の意識の高さが反映された結果と言えるでしょう。受講者はどちらの研修も北海道・東北地方や九州・沖縄地方からの参加者もおり、特に日図協の研修では自費の方も多いと聞いています。
 神奈川県はそういう意味では地理的にも恵まれ、また県立図書館や神奈川県図書館協会等の研修も多く、機会には恵まれています。この状況を活用することで、自らの経験値を向上させることも可能だと思います。
 今の図書館は大きな曲がり角に立っています。曲がり角というよりも危機と言った方がより適切でしょう。そのような時代の流れの中で、図書館司書だけが安穏としていられる根拠は残念ながらありません。研修や実践でスキルを磨きより良いサービスを行なうことは、利用者の方の利益となり、さらに図書館界を発展させる原動力となるからです。そして図書館職員はサービス職であり、そのことに誇りと自負と責任をもてるようにしたいと思うのです。