協会報(~239号)

国立社研 図書館司書専門講座に参加して

2012年3月19日 11時36分 [管理者]
国立社研 図書館司書専門講座に参加して
  
横浜市中央図書館 梅谷 久美子 

 平成17年度図書館司書専門講座に参加いたしました。この研修は、文部科学省、国立教育政策研究所が主催し、勤務経験7年以上の司書を対象に2週間のプログラムが用意された講座です。国社研の研修会場は上野にあります。私は横浜市内に住んでおりますので自宅から通いましたが、遠方から参加された方々は、松戸にある宿舎に入って毎日通っておられました。日本全国の図書館から集まった司書の方々65名と机を並べ、日ごろの業務とはまた違う緊張感を味わいながらの密度の濃い時間を過ごしました。研修内容と講師は国社研ホームページ(*1)をご参照ください。講座のタイトルには、「指定管理者制度」「危機管理」「ボランティア」「PFI」「情報拠点」などが並び、気になるトピックが多く盛り込まれています。講義形式が多く、細大漏らさず聞いて持って帰ろうとの心積もりだったのですが、演習もしっかり含まれており、当然、聞くだけではありませんでした。
 演習形式で受けたものは強く印象に残っていますので、それらについていくつかご報告したいと思います。まず「図書館評価の現状と課題」という研修ですが、これは講義を受けるにあたり、各自が勤務する図書館のおかれた地域の課題に応じて[①行政支援②子育て支援③学校(教育)支援④産業(ビジネス)支援]の中からどのような課題解決型の図書館がイメージできるか選び、それをどのような指標で評価するか考え、前もってワークシートを作成することが求められていました。聴講後、さらにワークシートに手を入れ、完成したものを4名の方が発表し、それぞれに講評があったのですが、限られた図書館資料の付加価値をいかに高め情報を発信してゆき、アピールしていくか、そのためにも評価をする枠組みが必要であるという点が強調されていました。
また「これからの図書館サービス」という研修では、国立国会図書館関西館の協力を得て、レファレンス共同データベース事業に参加している館
のみがアクセスできるデータベースを使用しながら課題に取り組みました。この事業は、レファレンス質問の処理記録をデータベース化し、インターネット上で共有し活用していくためのもので、将来一般公開される予定だそうです。このデータベースに予めアクセスし個々の記録の質が高いと考えられるものを探し、それを選んだ理由を考える事が課題になっていました。困難なレファレンスをどう解決したかということではなく、記録をどう見せているか、知識・技術がいかに可視化されているかが<記録として>判断する際のポイントになるようです。データベースはさまざまなレファレンスの事例の蓄積・共有により、一層有用なものとなり、一般公開をすれば図書館のサービスを目に見える形で提示し、図書館PRに大きく貢献することでしょう。
 「図書館サービス計画の企画・立案」は、先にあげた演習とは違いグループで取り組む課題でした。モデル県(市町村)を決め、そこにある図書館の置かれている状況に応じた課題を見つけ、それを解決する計画を企画・発表するというものです。テーマの事例としては、図書館システムの整備や図書館資料の構築と管理、図書館相互協力等々、多岐にわたります。私達のグループは方向性がなかなかまとまらずかなり難航したのですが、互いの図書館ではどのようなやり方でどんな風に考えているのかを実際にやりとりできたことは意義のある体験でした。
 また、研修後、今回の参加者の有志によるメーリングリストが作られ、引き続き情報交換の場が持てた事はとても幸運な事だと思います。研修で学んだ事も大切ですが、それ以上に人とのつながりは得がたいものです。長期研修の意義はこのあたりにもあるのではないでしょうか。最後になりましたが、たくさんの刺激を与えていただいた研修生の皆様と、気持ちよく職場から送り出してくれた周囲の皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。
*1http://www.nier.go.jp/jissen/index.htm
(URLは2005.11.13現在です。原稿執筆時点とは変更になりました。)