協会報(~239号)

年間活動報告(蔵書評価特別委員会)

2012年3月19日 10時24分 [管理者]
●特集:神図協この1年の動き
年間活動報告
蔵書評価特別委員会
 
 平成15年・16年度の特別委員会のテーマは「蔵書評価」でした。海老名市立中央図書館長を委員長に、県立、横浜市立中央、藤沢市総合市民、海老名市立中央の各館から1名ずつの委員で構成され、会議を重ね、今日に至りました。

私たち委員が知る限りにおいて、現在「蔵書評価」という言葉自体、日本ではなじみが薄く、定義や運営についての報告も少ないようです。今回の委員会設立の趣旨は、神図協会報No.207の同委員会報告で、同委員の関さんが書いているように、「各館各委員が自館の蔵書を分析し、公立図書館としてのモデルをまとめること」なのですが、まず「蔵書評価」、コンスペクタスとは何かということがわれわれにはわからず、会は出発から難航を極めました。また、二年間に渡る研究課題のため、年度替りには人事異動による委員の交代もあり、前任・後任委員各位もそれぞれ短い期間で内容を引き継ぎ・把握しなければならず、見えない苦労もあったと思われます。

こうして現在までの二年間の内容をふりかえると、苦労の連続であったとつくづく思います。まず第1回会議では、「コンスペクタス」ってなに?というところから始まりました。また、蔵書の「評価」であるからには当然、「基準」が必要なわけですが、その評価基準にあたるものを各図書館から見出すことが困難であるということがわかりました。つまり要約すると、コンスペクタスの基準とは、大学図書館内など、ある一定範囲内(運営方針の統一がはかられている)において、統一の評価基準をはじめに設定し、それについて各館がどのレベルの資料までは収集するといった、「複数館による蔵書の共同構築」という概念のもと設定されるものであるらしいのです。

ということは、規模や管理する自治体がまちまちである日本の公共図書館に基準がないのも当然のことであり、アメリカの方式をそのまま当てはめることはできないのです。ではどうするか。

そこでわれわれは、今回の委員会所属館の特徴をふまえ、県立、政令指定都市、市立の中でも比較的大規模な館、中小規模館という観点を活かしたデータが集められないか検討しました。

第2回、第3回は4館の蔵書に、便宜的にレベルを付与してどのような結果がでるか調査しようということになりました。しかし、ここでも問題が発生しました。便宜的にでさえ、客観的なレベルを設定するのが困難なのです。始めは出版社でカテゴライズしてみたらどうか、など手探りの調査がつづきました。

第4回・5回会議、このあたりで、やはり所蔵図書のデータ上に現在ある範囲で、かつ各館共通の数値がどうしても必要と意見が一致し、分類とMARCを利用しての蔵書構成の傾向を導きだすという手法を選択することになりました。

とはいってもそれは簡単なことではありません。なぜなら各図書館の使用MARCはまちまちであり、一冊の本に対する捉え方(専門書・入門書・中級書等々)は一定ではありません。そこをなんとかすり合わせをし、新刊書の発売日と購入期間を一定期間に限定したなかで、NDC100区分別に、全出版点数(これすらも完全に網羅しているわけではありません)に対する各館での購入比、特長などをデータ化してみました。

すると、調査範囲が狭いこともあり顕著というわけにはいかないものの、それぞれにうっすらとではありますが特長らしきものが浮かびあがりました。今回の調査結果が今後の神奈川県の蔵書評価を考える上で、たとえば、収集の分担制など少しでもなにかのヒントになれば良いと考えております。

また、参考になりそうだと思われる調査データ・意見などをまとめた報告書を年度末に発行する予定なので、内容に興味をもたれた方は、ぜひそちらに目を通して下さるようお願いします。私の拙い文章では伝えきれない内容が、ギッシリつまっているはずです。

最後になりましたが、この場をお借りして、協会事務局担当様、委員各位及び関係者の皆様、ご協力いただいた方々にお礼申し上げます。委員会の事務局だというのに、満足なデータ集計もできず、皆様に毎度お力添えいただきました。本当に感謝しております。二年間ありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

<委員 海老名市立中央図書館 草薙砂織>