協会報(~239号)

大学図書館からの情報発信を探る(大学図書館委員会)

2012年3月19日 10時35分 [管理者]
●特集:神図協この1年の動き
大学図書館からの情報発信を探る


大学図書館委員会 

昨今の大学を取巻く環境について見ると、少子化による受験者の減少傾向に加え、国公立大学の独立行政法人への移行や国公私の全大学に対する公に認証された評価機関による評価の義務づけにより、各大学間での生き残りを掛けた競争時代に本格的に突入したと言える。こうした中で、各大学では、教育研究の特色づくりや経営基盤の確立に苦心しており、大学図書館も含め学内各部門では実績とそれに基づく評価を積み上げ、自己の存在意義をアピールすることが求められている。

 この様な状況下で、昨年度に引き続き当委員会のメインテーマである「大学図書館からの情報発信」については、大学図書館にとってその存在意義を積極的にアピールする活路の一つであり、今がそのチャンスと言える。当委員会メンバー各館での現状や課題などを議論したが、大学の教職員等が創り出す知的生産物を学内及び学外(企業、個人及び一般社会)に公開し共有化していく取組について、学内で検討している処や検討と並行し一部実施の館など、取組にばらつきがあった。知的生産物には研究論文、科研費の研究報告等のほか、著作物やシラバス(講義要項)の紹介などが対象となるが、一般公開には、著作権の問題が避けて通れない課題としてある。また、発信の方法・手段については、今後、引き続き検討を要する課題でありコスト面の制約があるものの、各大学の事情を踏まえ、手間や工夫の仕方により様々な取組が求められる。

 以上のモノによる情報発信の外、人的サービスによる情報発信として、図書館員による学生に対する「情報リテラシー教育」の提供が有効と考える館が多く、一部の館で実施されている。

 一方、先程の大学評価機関による評価項目の中にある「図書館の地域開放」については、大学図書館からの情報発信と関連し、その存在意義をアピールする有効な方策の一つと捉えることができる。各館においても、行政や地域と連携し、それぞれ独自の取組をしているが、今後、レファレンスや情報リテラシー教育の提供等の市民ニーズを踏まえ、サービスの高度化に向けた展開が望まれている。

<委員長代理 横浜市立大学学術情報センター 三輪道夫>