協会報(~239号)

公立図書館における「危機管理」に係わるアンケート調査結果

2012年3月19日 10時29分 [管理者]
●特集:神図協この1年の動き
公立図書館における「危機管理」に係わるアンケート調査結果


危機管理特別委員会編

 危機管理特別委員会は、2004年(平成16年)7月、神奈川県下公立図書館における「危機管理」に係わるアンケート調査を実施した。

 最近、「危機管理」に関する本がたくさん出版されており、図書館界でもこれに関するテーマで書かれた本や雑誌が目に付くようになってきた。このような状況下、2004年5月21日に前橋市で開催された「関東地区公共図書館協議会総会及び研究発表大会」で、「図書館の安全(危機)管理」というテーマで発表した草津町立図書館職員の事例が記憶に新しい。その際作成した資料が「図書館の安全(危機)管理事例報告集(II)」である。この「報告集」を読むと、図書館員の身近でおこっているものから、まったく予想できないようなものまで、多岐にわたっている。

さて、当アンケートは、県立図書館2館と県内37市町村図書館の39図書館にアンケート用紙を配布し、実施した。その結果、31図書館から回答があった。回収率は79.5%であった。以下、回答が寄せられた主な内容について、その概要を述べる。

1.「危機管理上問題が多くなってきている」と回答した館が9割以上に上り、ほとんどの館が何らかの問題意識をもっていると推測する。

2.何についてそのように感じているかは、「自然災害」から「問題利用者」まで多岐にわたっている。

3.これまで「危機管理」の必要性を感じた館は7割に上り、すべての館が、「運営上危機管理が必要」であると回答している。(「無回答」の1館を除く)

4.「危機管理にはどのようなものがあるか」との問いには、自然災害への対応から個人情報の保護や著作権等を挙げており、一言で「危機管理」と言っても、図書館運営のなかで様々な事象にわたって問題が発生する可能性があり、これからの図書館の取組みが求められるところである。

5.図書館の取組みの現状は、「危機管理マニュアル」を作成している館が3割に過ぎず、現在「マニュアル」が無い21館のうち、今後作成を予定している館は、6館だけである。また、危機管理に関する「研修」を実施している館は4分の1である。

6.トラブルが発生した後、4割近くの館が何らかの防止策を講じており、防止策を講じた館の4分の3が減少した、と回答があり、ほとんどの館で再発防止の抑止力になっていることが窺われる。
全体として、危機管理の必要性は十分に痛感し、マニュアルの作成や研修の実施などについても必要性を感じていながらも、具体的な対応に戸惑っている印象が窺える。下図のグラフは、「“危機管理”には、どのようなものがあると思いますか」の質問に、78件あった回答の内訳である。



円グラフ マニュアル作成21%、組織対応19%、問題利用者17%、災害15%、研修会10%、窓口トラブル9%、施設面3%、システム関係3%、個人情報1%、著作権1%、人権1%

最後に、このアンケート調査の結果は「報告書」として、各館に配布する。そんな中、日本図書館協会図書館経営委員会「危機・安全管理特別検討チーム」編集の「こんなときどうするの? -利用者と職員のための図書館の危機安全管理作成マニュアル-」が2004年10月に刊行された。既に手にとって見た方も多いと思う。図書館界も「危機管理」に対して、各方面から動きが出てきた。神奈川県図書館協会でも外部等から講師をお願いして、「危機管理」に関する研修を実施する機会を作ってもらえれば有難い。

<委員 県立図書館 内藤貞三>
(更新:2012年3月19日 10時30分)