協会報(~239号)

「指定管理者制度」談義

2012年3月19日 12時19分 [管理者]
「指定管理者制度」談義

企画委員長 横浜市中央図書館サービス課長 佃 一可

 昨年11月、久方ぶりに上海図書館スタッフの訪問を受けた。横浜市中央図書館と上海図書館はかつて技術交流を行うため隔年に相互に訪問するといった事業を行ってきた。最近は途絶えているが旧知の職員も多いため、公私に関わらずお互い相手国を訪問したときには立ち寄る場合が多い。今回の主たる訪問目的は関西で行われた図書館研究会の研修会参加だったという。
「研修会参加は面白かったですか」 「……」
「役に立ちましたか」 「……」
 通訳の劉さん(もっとも、今回の訪問団の中で上海でのグレードでは最も高いのかもしれないが部署が異なる)いろいろと答えを引き出そうと試みるが答えは押し殺されてしまう。たまりかねて劉さんが話し出す。
「日本では今、指定管理者制度が一番の問題なんですね。次から次へとパネラーが変わるんですけど何が問題なんでしょうかよく分かりません。日本は指定管理者制度でどんな図書館をつくろうとしているのでしょうか」 「……」 今度は私の方が黙ってしまう。
 世界には様々な図書館がある。シルクロードの西端、トルコのエフェソス。ここには紀元前ギリシャの植民地都市があり遺跡の中心に図書館がある。どんな資料が集められていたのかを考古学者のバリキさんに聞くと、ほとんどが遠征記・旅行記だったという。イタリアのメジチ家の図書館ではアリストテレスのモノがそろっていたのかと思いきや、ディレクターのミケランジェロは建物に夢中で集められた資料は聖書ばっかり。大学の発祥地、ベニスのサンマルコ広場の前に立つサンソヴィアーナ図書館、ここのコレクションは難解でよく分からない。全世界に君臨した大英帝国。スコットランドに点在する諸侯の図書館の蔵書は料理の本がほとんど。いずれも今の文化とはずれているがいずれも立派な図書館には違いない。
 最近、ソウルは市内に80以上の図書館を建設する計画を発表した。もちろん上海でも新館(分館)は年々増えている。彼らは「情報力」は「国力」だという米のドクトリンに従っている。別に何でもアメリカの物まねがいいわけではないが…。
 「指定管理者制度」を考えることが、どんな図書館が今必要かを考える機会にできないか、と思う。