協会報(~239号)

「子どもたちと歩んだ日々~かながわ・児童福祉事業の軌跡」刊行

2012年3月19日 14時41分 [管理者]
★「子どもたちと歩んだ日々~かながわ・児童福祉事業の軌跡」刊行

  神奈川県社会福祉協議会福祉資料室 飯塚 美穂子

 本書「子どもたちと歩んだ日々~かながわ・児童福祉事業の軌跡」は、それらの子どもたちを救うべく立ち上がった人々の熱い想いを資料として形に残し、後世に伝えようとの想いから取り組んだ研究事業の成果である。
 今まで多数の文献あるいは資料として取り上げられ、長年にわたり蔵書として収集・保存されながらも、一つに取りまとめられることもなく時を経てきた、「かながわの児童福祉事業史」である。
日本の近代化の過程において、戦前、そして敗戦直後から神奈川の児童がどのような状況におかれ、それに対して社会がどのように対応してきたのかを振り返るとともに、社会事業から社会福祉へという大きな歴史的転換を経ながら、子どもたちに対する責任を果たそうとしてきた先人たちの開拓的・先駆的な努力と業績をまとめている。
 広義の児童福祉は、養護をはじめ、保育、乳児、母子、障害、健全育成等、多岐にわたっているが、ここでは、神奈川の近代的社会事業の萌芽ともいうべき、「児童養護施設及び関連施設」に焦点を絞り、児童養護の歴史的経緯と要養護性の課題の変遷を明らかにしている。 
 本書の編集にあたり、整理・活用した蔵書は主に次のようなものである。
①児童福祉一般(児童福祉概論/児童福祉法成立資料/児童福祉事業の年史/調査研究報告書・計画、等)
②児童福祉施設関係(児童養護施設・乳児院・
児童自立支援施設等の年史/人物史、等)
③里親関係(里親会・家庭養護センター年史/里親制度関係資料、等)
④児童相談所関係(児童相談所年史・事業概要・研究紀要、等)
⑤障害児関係(在宅障害児・者団体年史/在宅障害児・者福祉制度関係資料、等)
⑥社会福祉一般(社会福祉の歴史/社会事業・社会福祉団体年史/人物史/調査研究報告書・計画、等)
国や神奈川県をはじめ、県内児童福祉施設・団体発行のものまで幅広い蔵書の数々は、神奈川の児童福祉の歴史を物語るうえで貴重な地域資料の一つである。それら個々の蔵書の存在と活用方法を広く公開し、また散逸することなく適切に保存していくことが、社会福祉関係の専門図書館として位置づけられている当資料室にとっての重要な使命でもあるといえる。
終戦直後の孤児や浮浪児こそいなくなったとはいえ、増え続ける児童虐待など、今日の子どもたちを取り巻く環境は必ずしも最善のものとはなりえていない。しかし、その中でも、子どもたちと真剣に向き合い、共感し、育ちを支えていこうとする人々がいることも忘れてはならない。
本書は、施設職員や研究者、学生など、今日の、また将来の児童福祉に関わるすべての人々に、ぜひ読んでいただきたい一冊である。
戦後60年という大きな節目を迎えた今、子どもたちとともに歩んだ人々の熱い想いや、その声を、そして、世の中の子どもたち一人ひとりの魂の叫びを、知っていただければ幸いである。