協会報(~239号)

第11回図書館総合展報告/フォーラム報告

2012年3月22日 14時06分 [管理者]
第11回図書館総合展報告

第11回図書館総合展 フォーラム報告 -安全・安心な図書館を目指して -  

研修委員会 神奈川県ライトセンター鳥海 須実子



 平成21年11月10日(火)から3日間、パシフィコ横浜で行われた図書館総合展にて、神奈川県図書館協会は、フォーラム「こんなときどうする?~図書館の危機・安全管理」(11月11日開催)を担当しました。
 講師に草津町立図書館の中沢孝之氏をお招きし、加盟館から事前に寄せられた事例をもとに、「今後発生する可能性がある危機に対して図書館でどのように備えるべきか」、「危機・安全管理マニュアル作成にあたっての留意点」などのお話をいただきました。当日は、183名のご参加をいただき、大盛況のうちに終えることができました。
 以下、報告および感想を述べます。
 講演は、まず威勢のよい「あいさつ」から始まりました。来館者に対して、目線を合わせて元気な挨拶をすることは、不審者がいた場合、牽制の役目をするそうです。そして、これを導入とし、「危機回避」についてのお話がありました。トラブル回避には、「あいさつ」に代表される「笑顔のサービス」、「日ごろからの護身術の訓練」、「危機事例の職員間での共有」などが有効とのことでした。
次に、「図書館の危機とトラブルの要因」について、事例を挙げながら説明がありました。図書館におけるトラブルの誘因となるものとして、
 ・「日ごろのサービスへの取り組み不足」(=図書館に対する不満が
  日常的に存在する状態。何かを引き金として爆発する恐れあり。)
 ・いろいろな方が出入りする場所にもかかわらず「図書館は安全な場
  所」という職員の誤った認識
 ・(一般論として)女性職員の比率が高い職場に加え、開館時間の延長
  によるシフト制の導入によって一層顕著になった「女性職員のみの
  体制」
などが存在するそうです。以上のことは、図書館側の努力によって改善できる事項なので、自らがトラブルの誘因とならないよう、日ごろからの危機管理を徹底させ、トラブルを起こさせない雰囲気作りが大切とのアドバイスがありました。

  


フォーラムの様子  

 次に、トラブルが実際起きてしまった時の対応として、サスマタ使用法の実演や、急病人が出た際のシミュレーションを行いました。
 「急病人が出たとき、まず何をしたらよいか」というシミュレーションでは、「傷病者の安全確保」「お連れの方を探す」「ドクター・ナースを探す」「救急車を呼び、救急車を誘導する」「AEDの使用」等々、会場から活発に意見が飛び交っていました。
 最後に、危機管理マニュアル作成について言及がありました。中沢氏によると、マニュアルは、管理部門より与えられるものではなく、先ほどの「急病人が出たとき」のシミュレーションのように、現場の図書館員自らが意見を出し、考え、作り上げ、育てていくべきものである、とのことでした。そして、作成したものは、非常勤職員やアルバイトを含めた全てのスタッフが同じように対応できるよう、日ごろからの学習が大切と述べていました。
 今回の中沢氏の講義自体が、ご自身の体験や、他の図書館の実例に基づき、築き上げてきたものであったため、この言葉には大変説得力がありました。
 全体を通して、本講義は、身近な事例を交えながら、核心に迫るという形式であったため、どの部分も実感を持って聴くことができました。中沢氏は私達と同じ立場=図書館に勤務する職員であるため、同職の身として、時に身が引き締まるような指摘もありましたが、ユーモアに富んだお話は、聴いていて全く飽きることがありませんでした。
 今回のテーマは、「図書館の危機・安全管理」についての総括的なものでしたが、この講義を聴いて、一言で「危機」といっても、人的・災害・衛生(伝染病など)・病気等々、各図書館で個々に詰めていかなくてはならない課題が数多くあることに気が付きました。利用してくださる方々にとって、安全で良い雰囲気の図書館でいられるよう、職員は常に「危機」に対して、意識的でいることが必要であると再認識した講義でした。

(更新:2012年3月22日 14時08分)