協会報(~239号)

横浜市立大学医学情報センターでの市民利用制度の開始について

2012年3月19日 15時17分 [管理者]
★横浜市立大学医学情報センターの市民利用制度の開始について
 
横浜市立大学医学情報センター 山内 正伸

 
 横浜市立大学医学情報センターでは、これまでも、当館の所蔵資料を調査研究のために必要とされる方には、閲覧と複写のサービスを提供してきました。このたび平成18年6月27日から図書の貸出も利用できる「市民利用制度」を開始しましたので、報告させていただきます。

市民利用制度の概要
 横浜市立大学では、すでに金沢八景キャンパスの学術情報センター本館で市民利用制度を開始していましたので、学情センター本館と合わせて共通利用ができる制度となっています。

貸出:医学情報センターは2冊、学情センター本館では4冊まで、合わせて6冊まで利用できます。貸出期間は2週間です。
利用資格:神奈川県内に在住または、在勤している20歳以上の方。
費用:市民利用カード代500円で1年間有効です。

 これまでの閲覧利用のサービスを閲覧利用制度とし、貸出を含めた利用サービスを市民利用制度とすることで、市民をはじめとする学外の方が、利用される内容によって選択できるようにしています。なお、閲覧利用はこれまで同様無料で、年齢や在住地域による資格制限はありません。

実施に向けた検討と準備
 市民利用制度を開始するにあたっては、すでに実施していた学情センター本館での市民利用制度の見直しを行い、利用資格については、従来の市民利用制度が横浜市内の在住・在勤に限定していたのを神奈川県内へと拡大しました。
平成17年度の医学情報センターの学外の方の閲覧登録者は1,059人あり、このうち33%は市外に在住・在勤の方です。延べ来館者数では2,945人の利用があり、70%の方が医療関係者(病院、医療系企業に勤務する方)でした。そのため、地域医療への貢献の点から、従来の制度の地域制限を緩和する必要がありました。また、本学で実施している生涯学習事業としてのエクステンション講座などの参加者が、必要に応じて大学の図書館も利用できるようにするためもあり、利用資格の変更をすることになりました。
 また、本学の学生の利用に支障がでないように配慮しなければならないことも課題でした。医学情報センターの年間貸出冊数は、1万6千冊で、このうち85%は学生の利用によるものです。蔵書14万冊のうち、雑誌や参考資料を除く貸出用図書は4万冊です。医学の進歩にあわせて、数年ごとに改版される図書が多くあり、最近数年に刊行された図書に学生の利用が集中するのが医学図書館の特徴といえます。
 一方、医学部キャンパスに在籍する2年生以上の医学・看護学の学部生630人に対し、これまで年間1,000人以上の学外の方の閲覧登録者があることから、市民利用制度の検討に際しては、学生の利用への影響が危惧されていました。そこで、医学情報センターでは、その蔵書規模から貸出冊数を2冊までとしています。
 また、学生の利用の頻度の高い国家試験コーナー、看護学コーナーの図書、及び一部の基本図書については、市民利用制度の対象外としました。
 こうした市民利用制度の検討を進めると同時に市民利用者がわかりやすく利用できるように蔵書配置の変更を行いました。まず二つの閲覧室に別れていた医学書の書架を移設して、医学分野の図書を一つの閲覧室にすべて集約しました。もう一方の閲覧室には看護学コーナーをそのまま残し、医学と看護学を閲覧室単位で区別するような配置としました。

利用状況
 9月末までの3ヶ月間に医学情報センターで受付した市民利用制度の登録者は50人で、医療関係者と一般利用者の比率は、6:4でした。同時期の閲覧利用制度の登録者315人における比率9:1に比べ、市民利用制度における一般利用者の比率が高いことがわかります。また、貸出を利用した人は延べ36人で、57冊の利用がありました。
 医学部の図書館において貸出を含めた一般開放を実施している館は少ないのが現状です。学生の学習環境を維持しながら一般開放を進めるには、いろいろな工夫が必要となります。医学情報センターの取り組みが、他の図書館の参考になれば幸いと思います