協会報(~239号)

博物館の図書室で楽しくも苦労している話

2012年3月19日 15時27分 [管理者]
★博物館の図書室で楽しくも苦労している話


 はじめに
 図書約15,000冊、雑誌約2,800タイトル、ビデオ約300本を提供しているミュージアムライブラリーに、年間約10万人前後のお客様がいらっしゃいます。カウンター業務は、学習指導員が担当しています。司書は事務室で図書や雑誌の整理をし、レファレンスがあればカウンターに出て行きます。しかし司書の仕事はそれだけではありません。
特別展用図書目録、雑誌文献目録の作成
 年に1回の特別展が近づくと、そのテーマで図書目録、雑誌文献目録を作成します。雑誌文献目録は、当館発行の『神奈川県立博物館研究報告 自然科学』や『神奈川自然誌資料』に目を通して作成しています。目録は特別展会場やライブラリーに置いています。特別展の内容に興味を持った人が、ライブラリー所蔵の図書や雑誌を使ってすぐに調べることが出来るので大変好評です。
自然科学のとびらへの執筆
 また広報としては、当博物館の館報で年に4回発行している「自然科学のとびら」の、ライブラリー通信というコーナーに、図書や雑誌の紹介を載せています。平成18年3月15日号に載せた『しもばしらをつくろう』は、本に書いてある通りに霜柱を冷凍庫で作って、その過程をレポートしながら本の紹介もするという形をとりました。試行錯誤の結果、やっと霜柱が出来たので、写真に撮って掲載しようと思いました。しかし室内で撮ろうとすると、室温が高くて鼻息でもすぐに表面が溶けてしまうので、寒風吹きすさぶ戸外に出て、息を止めて撮影しました。これも結構好評で、学校からの問い合わせもあったと聞いています。
友の会通信への執筆
 友の会通信にライブラリーの利用案内を書いて欲しい、と友の会の役員から原稿を依頼されたのは、平成16年12月でした。平成17年度の友の会通信には『もっとライブラリーを楽しもう!』という題で、4回に分けて連載しました。また友の会の新会員が見られるようにと、当館のホームページにも連載記事を載せています。
サロン・ド・小田原での講演
 友の会通信にライブラリーの利用案内を載せることが決まると、今度はサロン・ド・小田原の担当者に講演を依頼されました。平成17年1月のことです。
 サロン・ド・小田原というのは、博物館を軸にして、一般の方々と学芸員や研究者が気軽に交流できる場です。2ヶ月に1回開催しています。いつも事務室で仕事をしている司書が、ライブラリーのことを一般の方にお話しするのは、利用の促進にもつながるかもしれない、そのような気持ちで引き受けました。講演は10月の土曜日の夕方でしたが、講演を聞きに来てくれた方は博物館職員や友の会会員、ボランティアなど30人ぐらいだったでしょうか。近くの中学校の図書室を担当しているという教員も来ていました。
 しかしながら実際の話、貸出しもしていないし、一般の方がパソコンで蔵書検索ができるわけでもないので、ライブラリーについて1時間も話すのは結構大変でした。ライブラリーの利用の仕方のほかには、神奈川県の図書館事情やネットワークなどについて、また国会図書館や国立科学博物館の図書室の話などをしてみました。するとこれが意外と好評で、話を聞いた人の中には、神奈川県の図書館や他の図書館がこのような仕組みになっているとは知らなかった、目から鱗が落ちる思いでした、と言ってくださる方もいました。このサロンを通じて、当館ライブラリーのみならず、図書館というものを広く知らしめることができたのではないかと思います。
図書、雑誌データの公開
 そして現在、ライブラリーでは来年度に向けて図書、雑誌データのインターネット公開と、郵送による文献複写の受付について計画を進めています。データを公開することによってさらにライブラリーの利用が促進され、利用者の需要に応えられるようになったら、こんなに素晴らしいことはありません。
おわりに
 サロン・ド・小田原で最後に当時の館長が、博物館の図書室に専任の司書がいるとどんな良いことがあるのですか、と質問されました。専任の司書がいればこんなにもいろいろなことが出来るのです、とこれからも胸を張って仕事が出来るようがんばりたいと思います。