協会報(~239号)

IFLAソウル大会に参加して

2012年3月19日 15時31分 [管理者]
●IFLAソウル大会に参加して

鎌倉市中央図書館 浅見佳子

 
<韓国の図書館>
 2006年8月20日からソウルで行なわれた大会のオープニングセレモニーでは大統領時代に図書館振興政策を進めた金大中氏のスピーチがありました。日本では実現しなかった図書館の中央集権化を目指し、2004年には国立中央図書館を大統領直属機関としています。
 この辺のいきさつは私のような今どきの日本の図書館員には疎いのですが、ちょうど有川浩『図書館内乱』(メディアワークス)で触れられており、なぜ日本が韓国のような道をえらばなかったか考えさせられます。今回、文化長官のレセプションに参加しましたが、国立中央図書館長主催の催しはありませんでした。直属の国立中央図書館と言っても二重構造に問題があると言われているそうです。
 近年韓国の図書館振興に拍車をかけたプロジェクトである「小さな図書館(文庫の新設に国からの補助)」「奇跡の図書館(出版社やテレビ局を巻き込んで推薦図書を宣伝し、その売り上げで子ども図書館を作る)」の試みはそれぞれ面白いものですが、図書館経営の視点からすると、民間活用がぐっと進んだ形ともいえます。また、非常に教育熱心な国柄なので、図書館=勉強場所という意識が日本以上に強いようです。どこの図書館も学習室が広く、貸出カウンターは6時までだけれど、学習室は10時まで開館というところも多いです。図書館規模に比べて蔵書数が少ないのが気になります。

<セッション>
 ほとんどの催しが江南のコエックス(国際展示場)で行なわれたので会場移動も便利でした。同時通訳といっても、英仏中西露語なので、私などは、さわりの部分をききとるだけでも眉間にしわがよる状態ですが、それでも様々な会場を少しずつつまみ食いしてゆくだけでも、世界の図書館事情を体感でき、楽しいものです。
 「族譜のコレクションとデジタル化」等の韓国ならではのテーマもありました。
<Exhibition(展示会)>
 展示場は図書館総合展をイメージしてくださればよいと思います。展示場の中にあるポスター発表のコーナーは、一人パネル1枚のスペースを使って、来場者に個別に発表できるものです。質問も自由です。セッションを聞くだけではないIFLA体験ができます。個人的には、日本図書館協会のブース当番の傍ら、つたない芸?ですが、紙芝居ワールドデビューすることができ大変うれしかったです。

<図書館見学>
 新設の国立子ども青少年図書館と、ソウルタワーのすぐそばにある1922年創立のソウル市立南山図書館を訪問しました。鎌倉の図書館も2011年に創立100周年を迎えるので、どのように図書館の歴史が反映されているのか興味を持ったからです。
 南山図書館は、韓国の図書館の先駆ともいうべきところで、京城朝鮮総督府時代の蔵書もきちんと整理活用されており、館内の図書館史パネルや昔の教科書展示を見ても、韓国名物ハイテク情報化一直線でないところが興味深く、いぶし銀の趣がありました。もちろん、電子情報室もあり、よく活用されていました。新潟県立図書館と図書館同士の職員交流もあるそうです。

<終わりに>
 今回私は図書館問題研究会神奈川支部企画のツアーに参加しました。もちろん個人でも参加できるのですが、セッションや図書館見学の情報をお互い交換することで、他の催しの雰囲気を知ることができ、また一層自分の体験をクリアにすることができたので、たいへん有意義でした。もしまた、近隣国で開催されることがありましたら、神図協のみなさんとご一緒して、世界の図書館について話し合う機会が持てたらと願っています。