変化のなかで、図書館を考える
2012年3月22日 15時57分 [管理者]横浜女子短期大学図書館 奥泉 和久
この春に、20年の永年勤続表彰を受けた。しばらく図書館を離れていた時期もあり、本学にはもう30年以上になる。思えば、学生も図書館も変わった。
空き時間になると、友だちと連れだって、雑誌を読みに来る。昼休みは、新しく受け入れた本を見たり、何人かで集まって相談したりしている。放課後は待ち合わせの場所にもなる。
ひとり静かに本を読む学生もいる。課題に取り組むため図書館に来る者もいる。だから、以前だと、館内は私語厳禁。ひどいときには退出を促したことも。だが、いまは、図書館にはもっと幅広い役割が期待されているように思われる。静的な空間と交流のための空間のそのいずれもが。
これは図書館への問題提起だと思う。たしかに利用者から信頼され、本当に役に立つ図書館をめざし努力もしてきた。けれど、そこに図書館の都合だけということはなかったか。図書館をとりまく状況は、どこも決してよいとは思えない。だから人気とりのために妥協しているといわれればそれまでだが、そうとばかりもいえないのではないか。利用者との対話なくしてサービスの改善はないのだから。
私自身、学生の居場所に図書館を、ということは随分前から考えていた。交流も含めて。同時に、本のこと、学習・研究など、一対多(教室)ではなく、一対一となって、司書に相談できる場こそが図書館なのだ、ということも。
いま、わが館のことを述べたが、これは公共図書館にもいえるのではないか。資料のデジタル化が進めば図書館は要らなくなるともいわれる。けれど、資料の形態が変われば、もっともっと情報はさがしにくくなる。そういうときに、利用者が求めている資料・情報を、一緒になってさがすことができるのはだれなのか、その方向の論議も深めていきたい。
どのように環境が変化しようと、それに応じて利用者が資料や情報にアクセスする権利を、図書館は保障しなければならない。それはどこの館でも同じ。変化する社会のなかで、図書館が有用な存在たり得ているのか、そのように自らに問い、現実のなかから答えをさがしつづけることも。